シンガポールの南洋理工大学(NTU)は8月27日、NTUと台北科技大学の研究者らが、ヒマワリ花粉由来のマイクロゲルを使って磁性ナノ粒子を腫瘍部位に長期間保持し、磁気温熱療法に必要な発熱能力を維持する送達システムを前臨床研究で実証したと発表した。研究成果は学術誌Advanced Functional Materialsに掲載された。

(出典:NTU)
磁性ナノ粒子は交流磁場にさらすと局所的に発熱するが、注入後に腫瘍部位から拡散したり、組織内に不均一に分布したりする。注入後24時間以内に腫瘍へ到達する粒子は1%未満で、十分な量を腫瘍内に保持することが課題であった。NTU材料科学工学部のナムジュン・チョ(Nam-Joon Cho)教授と台北科技大学のレン・ジェイ・チュン(Ren-Jei Chung)教授が共同で率いるチームは、ナノ粒子の化学的性質や生物学的標的化ではなく、担体の物理的形状に着目した。
チームは、硬くとげ状の外殻「エキシン」を持つヒマワリ花粉を柔らかいマイクロゲルに加工し、カチオン性リポソームと酸化鉄ナノ粒子を組み合わせた。HepG2肝がん細胞をモデル表面として、流れによるせん断力を加えた試験では、とげ状のヒマワリ花粉マイクロゲルは、表面が滑らかなツバキ花粉マイクロゲルの約6.7倍蓄積した。スプレーグドーリーラットの皮下腫瘍へ直接注入して交流磁場を加えると、複合材料は投与日に48.0±0.7℃、21日目にも44.9±0.3℃に達したが、担体を用いないナノ粒子は5日目までに40℃未満となった。21日後には腫瘍がほぼ完全に縮小し、組織学的解析で広範な腫瘍細胞の損傷と、線維性組織の再構築が確認された。
また、複合材料を投与した群の体表熱傷面積は0.27±0.05cm2で、担体に組み込まれていないナノ粒子を投与した群の1.56±0.08cm2を下回った。研究者らは、発熱がより局所に限定され、標的外へのナノ粒子の拡散が抑えられたためとみている。別の実験では、腫瘍微小環境の一部を模した酸化性の酸性条件に21日間置くと、マイクロゲルの残存乾燥重量が65%減少した。ただし、体内での長期的な分解、分布、排出の解明にはさらなる研究が必要である。チョ教授は、とげ状構造によって複合材料が腫瘍部位にとどまり、3週間後に磁場を再び加えた際にも治療に必要な熱を発生させたと説明した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部