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【26-03】中国本土から7社選出 革新的企業・機関トップ100

小岩井忠道(科学記者) 2026年01月29日

 国際学術・特許情報調査・コンサルティング企業「クラリベイト」は1月21日、技術研究とイノベーションで世界をリードする100の企業・機関(企業が大半)を「Top 100グローバル・イノベーター2026」として公表した。日本から最多、次いで米国、両国で半数を占める結果は前年同様だが、中国本土から前年より1増の7企業が選出され、増加傾向が続くことを今回の特徴としてクラリベイトは挙げている。

続くアジア地域企業の高評価

 クラリベイトは、自社が保有する特許データベースを基に選び抜いた「Top 100グローバル・イノベーター」について、業界の未来を形づくる高いインパクトを持つ発明の質、独創性、世界的な影響力で業界を先導している企業・機関と称えている。32社と最も多い日本に次ぐのが米国の18社、台湾の12社、韓国とドイツのそれぞれ8社、中国本土7社などだった。前年ゼロだったサウジアラビアとアイルランドからそれぞれ1企業が選出された以外、国・地域別の企業・機関数に大きな変化はない。特に上位10企業は前年と顔触れが同じだ。日本の5社以外では、1位、2位、7位が前年と同じ韓国のサムスン電子、中国本土の騰訊(テンセント)、韓国のLG化学、9位(前年10位)が米国の航空宇宙・防衛企業「RTXコーポレーション」、10位(前年9位)が中国本土の華為技術(ファーウェイ)となっている。

 RTXコーポレーション以外の上位10社をアジアの企業が占める結果も前年同様だが、クラリベイト社は、トップ100に前年より1社増え7社となった中国本土の企業の増加傾向が続いている結果を今年の特徴に挙げている。テンセント、ファーウェイのほか、22位(前年12位)の京東方科技集団(BOEテクノロジーグループ)、76位(同91位)の寧徳時代新能源科技(CATL)、88位(同順位外)の中興通訊(ZTE)、93位(同順位外)の長鑫存儲技術(CXMT)、100位(同順位外)のTCL科技集団(TCLテクノロジー・グループ)と、前年より順位を上げた企業が多いのが目を引く。業種も「電気通信」、「エレクトロニクス・コンピューター機器」がそれぞれ2社、「ソフトウェア、メディア、フィンテック」、「自動車」、「半導体」がそれぞれ1社と偏りは見られない。

 台湾も世界有数の半導体メーカーとなっている台湾積体電路製造(TSMC)が前年より6順位を上げ、12位となったのをはじめ、28位(前年41位)リアルテック・セミコンダクター、31位(同37位)メディアテック、36位(同35位)友達光電(AUO)、46位(同45位)緯創資通(ウィストロン)など前年同様、上位に多くの企業が並ぶ。数も前年より1減ったものの12社と前年同様、日米に次いで3番目の多さだ。学術研究機関である52位(同47位)の財団法人工業技術研究院(ITRI)を除く12社がすべて「エレクトロニクス・コンピューター機器」関連と「半導体」関連企業であるのも目を引く。

 韓国もサムスン電子とLG化学が前年同様1位と7位を維持したほか、LGエレクトロニクスも前年と同じ11位。以下、現代自動車14位(同16位)、SKハイニックス15位(同19位)、LGディスプレイ23位(同順位外)、サムスン電機40位(同29位)、サムスンSDI 69位(同74位)と、数は8社と前年と変わらないものの、上位に評価された企業が引き続き多い。さらに8社中「エレクトロニクス・コンピューター機器」関連企業が6社を占め、特にこの分野で企業の力が強まっている現状を示している。

クラリベイト「Top 100グローバル・イノベーター2026」国・地域別数

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(クラリベイト・ジャパン提供)

「Top 100グローバル・イノベーター2026」国・地域別の企業・機関数と過去6年の企業・機関数
(クラリベイト「Top 100グローバル・イノベーター2026」、同2025、2024、2023、2022、2021、2020から作成)
国・地域 企業・
機関数
最上位企業・機関名(順位) 2025年 2024年 2023年 2022年 2021年 2020年
日本 32 キヤノン(3) 33 38 38 35 29 32
米国 18 RTXコーポレーション(9) 18 17 19 18 42 40
台湾 12 TSMC(台湾積体電路製造)(12) 13 11 11 9 5 4
韓国 8 サムスン電子(1) 8 8 5 5 5 3
ドイツ 8 シーメンス(18) 8 7 7 9 3 4
フランス 5 フランス原子力庁(25) 7 6 7 8 3 5
中国 7 テンセント(2) 6 5 4 5 4 3
スイス 3 STマイクロエレクトロニクス(34) 3 4 3 4 3 3
オランダ 3 フィリップス(43) 2 3 3 3 2 2
スウェーデン 1 エリクソン(44) 1 1 1 1 1 1
サウジアラビア 1 サウジアラムコ(39) 0 0 1 1 0 0
フィンランド 1 ノキア(67) 1 0 0 0 1 1
アイルランド 1 アプティブ(96) 0 0 0 0 0 0
英国 0 0 0 1 2 1 0
カナダ 0 0 0 1 0 1 1
スペイン 0 0 0 1 0 0 0
ロシア 0 0 0 0 0 0 1

日本企業9社15年連続選出

 日本からは前年より1社、前々年より6社減った32企業が選ばれた。上位10内にはキヤノン3位(前年4位、前々年2位)、本田技研工業4位(同3位、3位)、トヨタ自動車5位(同5位、4位)、セイコーエプソン6位(同6位、5位)、富士フイルム8位(同8位、8位)と前年、前々年と同じ5企業が名を連ねている。

 日本企業32社の内訳を見ると、最も多いのはエレクトロニクス・コンピューター機器関連企業で12社。次いで自動車関連の5社、産業コングロマリット、産業システム、化学・素材関連がそれぞれ3社となっている。クラリベイトは15年前から毎年「Top 100グローバル・イノベーター」を公表しており、2年前からは1位から100位までを順位付けしている。今回、15年連続で「Top 100グローバル・イノベーター」に選ばれた企業は世界で16社あるが、このうち半数を超える9社が日本企業だ。近年、海外の教育誌や高等教育評価機関などが毎年、公表する世界大学ランキングや、他の研究者から引用される回数が多い価値ある論文数の比較で日本の研究力の低下が指摘されている。しかし、特許の保有・活用から評価した日本企業の技術研究・イノベーション力は、世界の企業の中で引き続き抜きん出て高い現状が改めて明らかにされた形だ。

「Top 100グローバル・イノベーター2026」日本企業 ( )内数字は前年:前々年順位
(クラリベイト「Top 100グローバル・イノベーター2026」、「同2025」,「同2024」から作成:―は順位外)
順位 企業 順位 企業 順位 企業
3(4:2) キヤノン 29(26:25) 住友電気工業 60(58:69) ニデック
4(3:3) 本田技研工業 30(31:19) 日立製作所 64(71:55) SCREENホールディングス
5(5:4) トヨタ自動車 33(39:39) デンソー 66(65:58) 信越化学工業
6(6:5) セイコーエプソン 37(24:9) ファナック 70(60:62) 三菱重工業
8(8:8) 富士フイルム 41(51:59) キオクシア 74(57:65) TDK
16(17:18) ソニーグループ 48(46:―) NTT 77(55:54) 富士通
17(13:11) 三菱電機 49(48:48) 京セラ 78(63:47) 矢崎総業
19(25:33) 東京エレクトロン 50(61:61) 日東電工 82(73:53) 住友化学
20(14:17) パナソニックホールディングス 51(53:60) ブラザー工業 83(88:88) 日本電気
21(23:24) 東芝 53(54:85) ダイキン工業 92(-:- SUBARU
24(21:21) 村田製作所 55(59:66) リコー    

高まるAI関連特許の影響力

 革新的知識を提供する世界的リーディング企業と評価された「Top 100グローバル・イノベーター」はどのように選出されるのか。2000年以降に500件以上の特許を出願し、かつ2020年から2024年の5年間で100以上の特許を登録したという二つの条件を満たす約3,000の企業・機関をまず絞り込む。さらに、他者のアイデアに与えた影響として算出した発明の技術的リーダーシップレベル(影響力)、有効で斬新なアイデアとして生み出された経済的資産レベル(成功率)、発明に投じられた金銭的・地理的投資レベル(地理的投資)、技術発展のレベル(希少性)という四つの指標で、企業・機関が保有する特許の価値を厳密に評価している。加えてサステナビリティ(持続可能性)、ウェルビーイング、モビリティ(流動性)、コネクティビティ(連結性)、オートメーション(自動化)も重視している。

 今回の選出結果の特徴について、クラリベイトは次のように説明している。選出組織には、俊敏なスケールアップ企業やグローバルなコングロマリットから、ディープテックの先駆者、業種横断型企業まで含まれており、イノベーションの多様性が反映されている。さらにその結果、明らかになったこととして挙げているのが、人工知能(AI)がイノベーションの基盤の一部になっている現実だ。2019年以降、AI関連特許出願件数は倍増し、2025年半ばまでに100万件以上の発明が公開されている。生成AIやディープラーニングは驚異的なペースで成長し、テクノロジーの最前線で最も急速に進化する分野となっている。トップ100企業は高強度なAI発明の16%を占めている。こうした実態を紹介し、「今日のリーダーシップが量ではなく、質と戦略的明確さによって定義されることを示している」との見方を明らかにしている。

プラットフォーマーは特許重視しないか

「Top 100グローバル・イノベーター」の半数を日米の企業が占める実態は今回も変わらない。ただし、米国の企業数が5、6年前に比べると半数以下にとどまる状況が続く。ではなぜ米国の企業に対する評価が前年、前々年とあまり変わらないのか。保有する膨大な特許に関するデータベースが基になっているクラリベイト社の評価法が、財政的な成長と収益性を重視して革新的企業・機関とみなす評価法とは異なるのが理由とみられる。デジタル変革をいち早く実現して社会にとってなくてはならないサービスや商品を提供し、飛び抜けて高い時価総額も誇る米国の5大IT企業アルファベット、アマゾン、メタ、アップル、マイクロソフトのうち、今回、57位(前年67位)のアルファベットと68位(同順位外)のアップルはトップ100に選ばれたものの残り3社の名はない。

「ソフトウェアの特許はハードウェアと比較すると安定的な広い特許は取りにくい傾向がある。5大IT企業のようなプラットフォーマーはその市場維持を自らの規模や広告効果などで行い、特許による知的財産の形成、保護が中心にはならないのではないか。自らハードウェアを開発して販売する業態を含む企業と比較すると」。クラリベイト・ジャパンの知財情報担当者がみるこうした状況は、依然変わらないということのようだ。

Top 100グローバル・イノベーター2026ランキング

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(クラリベイト「Top 100グローバル・イノベーター2026」から)

関連サイト

クラリベイト「Top 100グローバル・イノベーター2026

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