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AIに対する期待突出する中国 創造性に関する5カ国調査

小岩井忠道(科学記者) 2026年04月09日

 自分自身を創造的だと自認している人ほど、人工知能(AI)を「創造性拡張のパートナー」とみなして積極的に活用していることが、大手総合広告代理店「博報堂」の日本、米国、中国、ドイツ、フランスの一般消費者を対象に実施した調査で明らかになった。一方、創造性に期待がかかる領域について、中国では他の4カ国と異なり「AIの開発や利活用」が最上位になるなど、創造性に対するイメージや期待についての5カ国の人々の見方が多様な現実も示されている。

 博報堂のクリエイティビティを未来創造の技術として研究・開発・社会実装する専門機関「UNIVERSITY of CREATIVITY」は、「創造性白書2026年版」を2月末に公表した。AI時代における創造力の価値や意識、社会的インパクトをグローバルな規模で明らかにすることを目的に、昨年8月実施した「第1回創造性グローバル定点調査2025-2026」の結果が示されている。調査対象者は東京・大阪、ニューヨーク・カリフォルニア、北京・上海、ベルリン・ハンブルク・ミュンヘン、パリ首都圏・マルセイユ首都圏という5カ国の主要都市居住者(基本的に一般消費者)各国700~710人、合計3,526人。性別および年代(15~19歳、20代~60代、70代以上の7区分)ごとに50人以上からインターネット調査法で得た回答を基にしている。

39%が創造的と自認

 調査でまず明らかになったのが、自分自身を創造的だと自認している人の多さ。「自分を創造的だと思うか」との問いに対する回答結果を7段階に分けたところ、「かなりそう思う」と答えた最上位の「創造性高自認層」は13.3%で、2位の「そう思う」を合わせた上位1、2区分に相当する「創造性自認層」は39.0%となった。7段階の下から1,2位に区分けされた「創造性非自認層」は9.2%しかいない。

 さらに目を引くのがAIを利用している人の活用状況と比率だ。AI活用の程度を上級(コンテンツやプログラムの作成。AIエージェントの作成活用など)、中級(アイデア発想。レポート・ビジネスプラン・ビジネスモデル作成など)、下級(他愛もない雑談。文章の要約。情報の検索・収集サポートなど)に分けて、自分の創造性をどう見ているか、とAIの利用の仕方を比較している。「創造性自認層」では、AIを利用する人のうち61.8%が、上級・中級レベルの活用をしている一方、「創造性非自認層」では、AIを利用する人のうち上級・中級レベルの活用者は28.8%にとどまる。

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(博報堂UNIVERSITY of CREATIVITY「創造性白書2026年版」から)

行動・価値観に大きな違い

 調査結果は、創造性に対する見方の違いが人々の行動や価値観に大きな違いをもたらしている実態も重視している。創造性を磨くための行動として「創造性自認層」では、「自分で何かをつくる」に加え、「夢中になれる趣味や関心の保持」「自分の技術の向上」「オリジナリティとユニークネスの重視」を挙げる人が多い。創造性の活用が期待される分野として「ウェルビーイング」や「暮らし・ライフスタイル」といった個人の日常に関わる分野と、「教育・学び」や「メディア・ジャーナリズム」といった社会に関わる領域のいずれも挙げる人が、「創造性自認層」では「創造性非自認層」に対し、比率(パーセント)が13~20ポイント高かった。こうした結果から、創造性を自認する人ほど「日常生活の中で創作的な実践や自らのオリジナリティを大切にする傾向が見られる」との見方を示している。

 さらに目を引くのは、日本、米国、中国、ドイツ、フランスの一般消費者における創造性に関する見方の違いだ。「あなたは『創造性』と聞いて何を思い浮かべますか?」という問いの答えとして挙げられた5項目に対する5カ国全体の回答結果はいずれも30%台だった。「創造性がより活用されるべきだと思う領域はどれですか?」で挙げられた7項目に対する答えはやや幅があり、20%台が5項目で、残る2項目のうち「暮らし・ライフスタイル」が39.6%、「教育・学び」が37.7%となっている。

文化的特性が大きな影響

 一方、国別でみると明らかになったのが、創造性の捉え方にみられる明確な文化的特性の違い。創造性に対するイメージとして最上位となったのは、日本が「これまでにないものを生み出すこと」で44%、米国が「異なるものを融合させて、新しいものを生み出す」の50%、中国が「いまの常識や秩序を壊し、新しく生み出すこと」の52%、ドイツが「異なるものを融合させて、新しいものを生み出す」の45%、フランスが「毎日の生活をよくするアイデアを生み出すこと」の42%となった。

 各国の違いは、期待する創造性の活用先に対する答えにも見られる。米国、ドイツ、フランスではいずれも「教育・学び」が1位、「暮らし・ライフスタイル」が2位となり、日本も1位が「暮らし・ライフスタイル」、2位が「教育・学び」と順位は入れ替わったものの3カ国と似たような結果となった。これに対し中国は1位に「AIの開発や利活用」、2位に「新しい経済モデル」と、他の4カ国では上位5位に入っていない2項目が1、2位になっている。特に「AIの開発や利活用」を挙げた人が55%と、唯一50%を超えたのが目を引いた。

 こうした結果に対し、報告書は次のような見方を示している。日本では、創造性を「これまでにないものの創出」として想起する傾向が強い。これは、創造性を日常の延長線上にある実践というよりも、特別な才能や突出した成果に結びつく「非日常的」な概念として受け止められやすいことがうかがえる。一方、欧米における創造性は、特別な瞬間に発揮される能力というよりも、個人の生活や社会全体に継続的に関与する「態度」や「姿勢」として理解される傾向が見られる。対して中国では、創造性は「常識や秩序の破壊と再構築」や「これまでにないものの創出」というイメージと強く結びついており、創造性は、社会モデルを大きく転換させるための推進力と位置づけられていると考えられる。これらの違いは、創造性が普遍的な概念でありながら、社会構造、教育、価値観といった文脈によって、その姿や意味合いが異なって表れることを示唆している。

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(博報堂UNIVERSITY of CREATIVITY「創造性白書2026年版」から)

中国の特異な状況示す報告他にも

 一般消費者のAIに対する期待が中国で特に高いという調査結果をどうみるか。博報堂が3月17日に公表した別の調査結果が参考になりそうだ。博報堂生活綜研・上海と中国伝媒大学広告/ブランド学院との共同研究「生活者"動"察」の結果だ。これは、1~4級都市在住のスクリーニング調査で生成AIを利用していることが分かった18~59歳男女3,000人が対象のインターネット調査や、1~3級都市在住のAI先端利用者・一般利用者20~59歳男女30人に対するインタビュー調査などを基にしており、昨年9~11月に実施された。

 4,871人を対象にしたスクリーニング調査では、61.6%が「AIを利用している」と答えた。この調査で「AIを利用している」ことが分かった3,000人に対する調査では、「週5日以上利用する」と回答したヘビーユーザーが46.2%に達し、AI利用者のうちの約85%が週に1日以上利用していた。特に30代ではヘビーユーザーが54.2%と最も多い。AIに対する意識では「不安に感じる」は1.8%にとどまり、「期待もあれば、不安もある」が29.6%だったものの、68.6%が「期待に満ちている」と答えている。

 また現在のAIの利用法については、仕事や学習、買い物や生活の情報収集などを効率化する「タスク効率化」を挙げたのは80.0%、次いで趣味を深めたり新たな技能を習得する「趣味技能の進化」が65.2%、AIを話し相手にして癒しを得たり、ストレスを解消したりする「情緒コントロール」が38.8%、AIとの対話を通じて自分らしさややりたいことをみつめる「上手に内省」が29.7%となっている。さらに目を引くのが、これらの活用はすべて今後大きく伸びることをうかがわせる調査結果だ。「利用意向が高まる」と「利用意向がやや高まる」を合わせた答えは「タスク効率化」が96.8%、「趣味技能の進化」が92.8%、「情緒コントロール」が78.1%、「上手に内省」が70.8%といずれも高い数値を示している。

「AIの急速な普及に伴い、さまざまなリスクも懸念されている。しかし、中国のAI利用者はAIのポジティブな側面により着眼し、自分の強みや好きなことを発見する好機とみている」。博報堂生活綜研・上海は共同研究結果から中国の現状をこのようにみている。

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(博報堂生活綜研・上海 第13回「生活者"動"察」研究成果から)

関連サイト

博報堂調査レポート「UNIVERSITY of CREATIVITY 【第1回 創造性グローバル定点調査】を実施 ―AI時代にみられる「Creative Living」という生き方― 自らを創造的だと回答した人の6割が、AIを”創造性拡張のパートナー”として活用中

博報堂調査レポート「博報堂生活綜研・上海 第13回「生活者“動”察」研究成果を発表

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