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中国から大学、企業など最多選出 AI分野のイノベーション推進機関

小岩井忠道(科学記者) 2026年04月24日

 国際学術・特許情報調査・コンサルティング企業「クラリベイト」は、人工知能(AI)分野で卓越した発明力とリーダーシップを示す企業・機関50を選出し、「Clarivate AI50」として公表した(編集者注:評価で同点があったため選出企業・機関数は50ではなく52となっている)。本社や本部が所在する国・地域別の数でみると最も多いのは中国本土の15、次いで米国の14、日本と韓国が各6となっており、この4カ国で選出企業・機関の80%を占めている。同社は技術研究とイノベーションで世界をリードする100の企業・機関を「Top 100グローバル・イノベーター」として毎年選出・公表しているが、AIに限って先導的役割を果たしている組織を選出し、公表するのは今回が初めて。

「Clarivate AI50」の選出法は、クラリベイト社が持つ特許データベースを基に、他者のアイデアに与えた影響として算出した発明の技術的リーダーシップレベル(影響力)、有効で斬新なアイデアとして生み出された経済的資産レベル(成功率)、発明に投じられた金銭的・地理的投資レベル(地理的投資)、技術発展のレベル(希少性)という四つの指標で、企業・機関が保有する特許の価値を厳密に評価する。こうした手法でまず企業・機関を絞り込むまでは「Top 100グローバル・イノベーター」と同じだ。さらにAIの基盤技術の創出、複雑なシステムへの実装から製品・業務プロセス・産業環境への展開に至るまで、どのようにAIイノベーションを推進しているのかを掘り下げて分析し、選出している。

政府・学術研究機関の役割も大きい中国

 選ばれた52の企業・機関の半数以上、27企業は、技術研究とイノベーション全般が評価対象となっている「Top 100グローバル・イノベーター」の最新版、「Top 100グローバル・イノベーター2026」にも選出されている企業だ。一方「Top 100グローバル・イノベーター2026」での選出企業・機関を国・地域別でみると、最も多かったのは日本の32、次いで米国18、台湾12、韓国8となっており、中国本土はその下の7にとどまる。「Clarivate AI50」では中国と日本の評価が大きく異なり、AIに対する中国の関心の高さと研究開発・活用が急速に進む実態が見て取れる。

「Top 100グローバル・イノベーター2026」との違いは、中国と日本に対する評価以外にもみられる。選出された中に政府・学術研究機関が11もあり、「Top 100グローバル・イノベーター2026」に選ばれた政府・学術研究機関がわずか3機関しかないのと大きく異なる。選出企業を「ソフトウエア、メディア、フィンテック」の10、「エレクトロニクス・コンピューター機器」の7、「半導体」、「自動車」の各5など業種で区分けして比較しても、いずれも上回る。

 特に中国本土からは中国科学院や浙江実験室という政府・省の研究機関をはじめ、清華大学、浙江大学、華中科技大学、武漢大学、北京航空航天大学、南京郵電大学、山東大学と、政府機関と大学の合計9機関が選ばれているのが目を引く。一方、企業も「Top 100グローバル・イノベーター2026」にも選ばれている華為技術(ファーウェイ)、騰訊控股(テンセント)をはじめ、阿里巴巴(アリババ)、百度(バイドゥ)、字節跳動(バイトダンス)、秦川物聯(秦川インターネット技術)という「電気通信」、「ソフトウエア、メディア、フィンテック」関連の7社が選出されている。政府機関、大学、企業がそれぞれ中国のAIイノベーション推進で大きな役割を果たしている実態が見てとれる。

中国と米国が先導

 中国に次いで14と多い米国はどうか。アルファベット、アプライドマテリアルズ、ディア・アンド・カンパニー、ゼネラルモーターズ、KLAコーポレーション、マイクロンテクノロジー、クアルコムと、「Top 100グローバル・イノベーター2026」にも選出されている企業が7社あり、残りの7社もフォード、GEヘルスケア、IBM、インテル、マイクロソフト、エヌビディア、SLBと有名企業ばかりだ。「ソフトウエア、メディア、フィンテック」、「半導体」、「電気通信」、「エネルギー・電気」、「医療・バイオテクノロジー」、「自動車」から「産業システム」と多様な領域の有力企業が米国のAIイノベーションの先導役を担っていることを示す結果となっている。

 中国本土と米国に本社や本部がある政府機関、大学、企業が世界のAIイノベーション推進でとりわけ大きな役割を果たしていることが見てとれる結果はもう一つある。クラリベイト社は選出機関をその活動から四つのグループに分類している。重要度が高いとみなされた世界のAI関連発明全体に占める比率から見た「貢献度」と、その組織の発明活動全体に占めるAI関連発明の比率を見た「集中度」という二つの指標で整理したものだ。

 AIの基礎的部分といえる他者が構築の基盤とするAIモデル、ハードウェア、標準規格などに投資している。さらにその技術が下流アプリケーションの中核に位置し、複数の国や地域で知的財産として保護されている。こうした「貢献度、集中度ともに高い」グループに入っているのはすべて中国と米国の政府・学術研究機関と企業だ。中国科学院、清華大学、ファーウェイ、テンセントなど中国からは12機関・企業、米国からはアルファベット、インテル、マイクロソフト、エヌビディアなど6企業が名を連ねている。

 日本はどうか。キヤノン、富士フイルム、富士通、三菱電機、ソニー、トヨタ自動車と6社が選ばれている。いずれも「Top 100グローバル・イノベーター2026」にも選出されている技術研究とイノベーションで世界をリードすると評価される企業だ。このうち三菱電機とトヨタ自動車は、AIをシステムに変換する実績を評価されたが、その組織の発明活動全体に占めるAI関連発明の比率の大きさをみた「集中度」は「やや低い」とみなされるグループに入っている。残る4社は実務でのAIの大規模展開を評価された一方、重要AIへの「集中度」と重要度が高いとみなされた世界のAI関連発明に占める比率を見た「貢献度」はいずれも「やや低い」とされるグループに含まれている。

「Clarivate AI50」選出企業・機関

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(「Clarivate AI50」から)

中国の影響力急拡大示す報告他にも

 AI分野で中国が世界をけん引するほど急速に影響力を強めているとする報告は数年前から目につく。文部科学省科学技術・学術政策研究所は2023年5月、AI分野で世界最大の学会といわれるAAAI(Association for the Advancement of Artificial Intelligence)の年次大会の発表件数で中国(香港、マカオも含む)が2020年に766件と、734件の米国を初めて追い抜いてトップに浮上した、という報告書を公表している。日本は58件と中国、米国に大きく見劣る。さらに2020年2月に開催された年次大会では筆頭著者が中国人とみられる発表件数が全体の57%に上るという報告書も翌2024年8月に公表している。

 中国国民のAIに対する関心や期待が非常に高いという調査結果も報告されている。大手総合広告代理店「博報堂」の生活綜研・上海と中国伝媒大学広告/ブランド学院が昨年9~11月に実施した調査では、中国の1~4級都市在住の一般消費者4,871人のうち「AIを利用している」と答えた人が61.6%に上るという結果が得られている。さらに「AIを利用している」ことが分かった3,000人に対する調査では、「週5日以上利用する」と回答したヘビーユーザーが46.2%に上るという結果も示されている。

関連サイト

クラリベイト「Clarivate AI50

クラリベイト「Top 100グローバル・イノベーター2026

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