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2026年上半期の中国経済と金融政策

2026年07月29日

露口洋介

露口 洋介(つゆぐち ようすけ):帝京大学経済学部 教授

略歴

1980年東京大学法学部卒業、日本銀行入行。在中国大使館経済部書記官、日本銀行香港事務所次長、日本銀行初代北京事務所長などを経て、2011年日本銀行退職。信金中央金庫、日本大学を経て2018年4月より現職。著書に『中国経済のマクロ分析』(共著)、『東アジア地域協力の共同設計』(共著)、『中国資本市場の現状と課題』(共著)、『中国対外経済政策のリアリティー』(共著)など。

 7月15日に中国国家統計局と人民銀行がそれぞれ記者会見を開き、2026年上半期の経済状況と金融政策について説明した。これらの内容について検討したい。

2026年上半期の経済状況

 国家統計局の毛盛勇副局長は、7月15日の記者会見で、2026年上半期の中国経済について説明した。そのポイントは以下のとおりである。

 経済状況は総体的に平穏に推移している。2026年1~6月の実質GDPは69.6兆元であり、前年同期比4.7%の成長となった。第2四半期の成長率は4.3%と第1四半期の5.0%から低下したが、経済の安定的成長という基本的状況は変化していない。ある国際機関の予測によると第2四半期の主要国・地域の成長率は全て低下している。IMF(国際通貨基金)は7月の予測において2026年の世界全体の成長率を4月時点の予測の3.1%から3.0%に引き下げたが、そうした中で中国については4.4%から4.6%に引き上げた。

 第2四半期の成長率の低下について見ると、第1に、石油化学産業に対する外部要因の影響と、石炭生産が国内の価格維持のための短期的調整政策で抑制されていることが影響している。第2に、名目値でみると、第2四半期の成長率は5.9%と第1四半期の4.9%を上回っており、名目値では好転している。第3に、ハイテクや通信、製造設備など新技術産業の伸びが第1四半期を上回っている。第4に、工業、サービス業、輸出入などの月次統計を見ると、4月、5月、6月と月を追って好転している。従って、経済の安定的成長という状況は維持されている。

 下半期について見ると、新技術産業が経済成長に占める貢献度は40%を超えており、経済を牽引し続けること、第2四半期に経済を下押しした短期的要因がなくなること、経済政策の効果が表れてくることなどから年間の経済成長目標である4.5%~5.0%を実現する条件は整っている。

 不動産市場については政策の効果が表れてきており、変化が出てきている。一級都市の住宅価格は4か月連続上昇している。3月から6月の間の前月比上昇率はそれぞれ0.1%~0.2%となった。また、全国の住宅在庫も減少しており、6月末の全国住宅在庫は前年同期比で0.9%減少し、4か月連続の減少となった。さらに中古住宅市場も上半期のネット登記契約面積が前年同期比10.2%増となり活況を呈している。国家統計局が70大中都市で行った不動産価格アンケートによると、6月に今後半年間の新築住宅価格が安定ないし上昇するとした不動産市場従業員の比率は63.1%となり、4か月連続で60%を上回り、昨年の最低値を20%ポイント上回った。

2026年上半期の金融政策

 同じく7月15日に中国人民銀行の鄒瀾副総裁が記者会見を開き、上半期の金融政策について説明を行った。そのポイントは以下のとおりである。

 2026年に入ってから中国人民銀行は党中央、国務院の方針に従い、「適度に緩和した金融政策」を引き続き実施した。数量的緩和政策が効果を発揮しており、それに加えて年初に特定の分野への信用供与を優遇する構造性金融政策手段を拡大した。以下に示すように各政策手段が効果を表している。

 第1に、銀行システムの流動性の充足を保持した。リバースレポ、中期貸出ファシリティー、国債売買など多くの金融政策手段を総合的に運用し、流動性を供給した。上半期に人民銀行は、準備預金積立や現金放出などの要因による1兆元の流動性不足を十分相殺する流動性をこれらの手段で供給し、銀行間市場のオーバーナイト金利は6か月の平均で1.31%と2025年12月の加重平均値1.3566%と比べ相対的に低下した。市場金利のコントロールの正確性と有効性を増強するため、人民銀行は6月末にオーバーナイト・リバースレポ操作を導入した。

 第2に、社会全体の資金調達コストを低下させた。年初に構造性金融政策手段の金利を0.25%引き下げた。

 第3に、重点領域に対する金融のサポートを強化した。一連の構造性金融政策手段を新たに導入・拡充した。科学技術イノベーションと技術改造再貸出と農業・零細企業再貸出の限度額を増加し、1兆元の民営企業再貸出を新設した(詳細は 2026年1月のコラム を参照)。

 第4に、金融市場の平穏な運行を維持した。市場の需給が外国為替レート形成に与える役割を重視し、人民元為替レートの合理的均衡水準における基本的安定を保持した(中国では人民元為替レートが金融政策の手段と位置付けられている点については 2024年5月のコラム を参照)。6月には、上海自由貿易区でオフショア人民元外国為替取引の試行を開始し、6行の銀行が直接本土外の主体と人民元外為取引をできるようにした。これによって、オンショアとオフショアの人民元市場の融合が促進される。

金融政策の効果

 以上の金融政策の効果について、以下のようなポイントが述べられている。

 上半期の金融統計を見ると金融政策が実体経済に貢献したことは明らかである。第1に、金融数量が合理的な増加を示した。6月末の広義通貨供給量M2の前年同期比は8.0%の増加、社会全体の資金調達額を示す社会融資規模残高は同7.4%の増加となった。両者とも名目GDPの伸び率5.4%を上回り、人民銀行の中間目標を達成した。第2に、社会全体の資金調達コストが歴史的低水準となった。6月の新規企業貸出加重平均金利は3.0%となり、昨年同月比0.20%ポイントの低下となった。第3に、貸出構造が引き続き改善した。6月末、小規模・零細企業向け包摂型貸出残高は前年同期比8.3%増、工業中長期貸出残高は同5.9%増、不動産産業を除くサービス業の中長期貸出残高は同9.2%増と全て貸出全体の伸び率(5.1%)を上回った。第4に、金融市場の運行は平穏であった。債券市場は落ち着いており、10年物国債利回りは2025年末の1.85%から低下し1.73%前後で推移している。人民元為替レートは安定的に上昇した。バスケット通貨に対する人民元為替レート(CFETS指数)は2025年末と比べ4.7%上昇した。対米ドルでも同3%の上昇となった。

今後の金融政策の展望

 以上の記者説明を前提に下半期を展望すると、第2四半期(4~6月)については成長率が4.3%と第1四半期(5.0%)から低下しているが、国家統計局はこれについて、イランからの石油の調達難など一時的な要因によるものとしており、先行きについては、目標値を実現する可能性が高いとしている。IMFも最新の7月時点の予測で中国の2026年の成長率は4.6%と中国の目標の範囲内となるとみている。しかし、イラン情勢を含め世界の経済動向は未だ不透明であり、中国経済に引き続き影響を及ぼすであろうし、不動産市場の停滞による経済の下押し圧力も継続すると見込まれることから、下半期の成長には不確実性が存在するだろう。

 このような状況の下、金融政策は1月に構造性金融政策手段の金利引き下げなど部分的な緩和政策を発動した後、特に動いていない。現状、中国では金融政策は共産党の中央金融委員会で実質的に決定されている。2025年10月に開催された中国共産党第20期中央委員会第4回全体会議(四中全会)において、2025年に引き続き2026年も「適度に緩和的な金融政策」を行うとされた。今回の記者会見でも人民銀行は今後も「適度に緩和的な金融政策」を引き続き実施するとしている。下半期には状況に応じ、1月には実施されなかった預金準備率の引き下げや、政策金利の引き下げなどさらなる金融緩和措置が実施される可能性があろう。

(了)


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