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(第2回)最近の中国の食料輸入動向とその要因

中国の食料サプライチェーンの基調-その動向を探る-
(第2回)最近の中国の食料輸入動向とその要因

2026年07月30日

高橋五郎

高橋五郎: 愛知大学名誉教授(農学博士)

略歴

愛知大学国際中国学研究センターフェロー
中国経済経営学会前会長
研究領域 中国農業問題全般

 世界一の食料輸入大国となった中国では、輸入食料はほとんどの品目に及ぶが、とくに、一次産品の大豆、トウモロコシ、小麦、大麦、コウリャン、二次産品の牛肉、乳製品、食用油、砂糖などは世界市場の動向に影響を与えうる重要品目である。

 中国は人口が天井に達し、経済成長がやや落ち着き始めたと見られているにもかかわらず、食料需要は増加の趨勢にあり、小麦、コメ、トウモロコシ、大豆、牛肉、乳製品、食用油などにおける品種選択の高級化、多様な高付加価値の加工食品需要へのシフトなどがその背景にあると考えられている。

 今後、中国の食料需要は従来までの量的拡大から質的拡大へ転換し、輸入品も品質のよいものへ置き換わって行くだろうが、まさにその転換点が現在なのである。そうした目で、最近の食料輸入動向を見ることが重要であり、本稿もまた、その視点からのものである。

1.2025年の輸入動向とその要因

(1)2025年の輸入動向

 表によると、2025年の中国の食料輸入は、品目によって増減方向が大きく異なった。最も顕著だったのは穀物輸入の減少である。食料全体としての穀物・豆類等を含む「粮食」輸入量は1億4056万トンで、前年比10.8%の減少だった。なかでも穀物および穀物粉は2579万トンと48.6%減少し、小麦・小麦粉は398万トンで64.4%減、トウモロコシ・同粉は265万トンで80.6%減、コウリャンは454万トンで47.5%減、大麦も1042万トンで26.8%減となった。

 これに対し、コメ・コメ粉は314万トンで89.6%の増加だった。また、豆類は1億1475万トンで6.9%増、その大部分を占める大豆も1億1183万トンで6.5%増加した。したがって、2025年の特徴は、食料輸入全体が一様に縮小したのではなく、国内で生産量の多い小麦、トウモロコシ、大麦、コウリャンなどの輸入が大幅に減少する一方、油脂・飼料原料として不可欠な大豆輸入が増加した点にある。コメについては長粒種と短粒種の統計的公表が行われていないので確かなところは不明だが、短粒種のうち味覚のよい品種の輸入が増えた可能性がある。

 その他の品目では、表によると、キャッサバ・同粉が1056万トンで67.6%増、果実・ナッツ類が908万トンで13.4%増となった。肉類は609万トンで8.7%減少し、牛肉は2.5%減、豚肉は9.0%減、羊肉は7.5%減、鶏肉は34.4%減となった。乳製品は1.6%増とほぼ横ばいである。

 食用油全体は5.8%増えたが、食用植物油は3.2%減少した。品目別には豆油が22.5%増、菜種油・からし種油が13.1%増となる一方、パーム油は8.2%減少した。砂糖は492万トンで13.1%増加した。

(2)政策的要因

 2025年の穀物輸入減少には、中国政府が国内生産者価格の下落を抑え、国内産穀物の販売を優先する政策を強めたことが関係している。中国では2023年、2024年と穀物が連続して豊作となった一方、輸入穀物も高水準で流入したため、国内市場では供給が需要を上回り、トウモロコシや小麦などの価格が低下していた。農業農村部が紹介した分析も、2025年第1四半期の穀物輸入減少には、国内産穀物の価格安定、農民の収益確保、食料自給能力の維持という政策的意味があったと説明している。

 中国の食料安全政策は、「国内を基本とし、穀物の基本的自給と主食の絶対的安全を確保したうえで、不足部分を適度に輸入する」という考え方に立つ。このため、国内に十分な在庫があり、価格が下落している局面では、国有企業や大手輸入業者に対する購入時期の調整、輸入割当の運用、検疫・通関管理などを通じて、穀物輸入を抑える操作が可能である。2025年の小麦、トウモロコシ、大麦、コウリャンの急減は需要減少によるものではなく、国内需給と価格を優先した輸入調整の結果とみるべきである。

 さらに、2025年3月10日、中国は米国産の小麦、トウモロコシ、鶏肉などに15%、大豆、コウリャン、豚肉、牛肉などに10%の追加関税を課した。また、3月20日からはカナダ産菜種油、油粕、エンドウ豆に100%、豚肉・水産物に25%の追加関税を課した。これらの措置は、米国産穀物やカナダ産菜種関連品の輸入採算を悪化させ、輸入先の転換や契約の延期をもたらした。とくに鶏肉の34.4%減少、穀物輸入の急減、パーム油以外の植物油・油料原料間の構成変化には、こうした通商政策の影響も含まれている。

(3)時事的要因

 以上に見られるように、中国産食料の国際競争力の不足(この点は前回述べた)による輸入促進よりも、国内生産者を優先する政策が目立つ。構造改革の促進をいっそう遅らせる要因となろう。

 2025年の輸入動向には、米中および中加間の通商摩擦に加え、国際価格と中国国内価格の開きが一段と災いした。2024年までに国際穀物価格が低下し、中国企業にとって輸入穀物の価格優位性が強まったため、輸入契約が積み上がった。しかし、国内でも豊作が続き、港湾在庫や政策在庫が増えたことで、2025年には新たな輸入を急ぐ必要性が低下した。すなわち、前年までの安価な輸入の集中が、2025年の輸入削減を必要にした側面がある。これは、我々市場重視派から見ると必要悪である。

 一方、コメ輸入が89.6%増加した点についてである。中国のコメは基本的に国内自給されており、輸入米は東南アジア産を中心に、特定品種、加工用、外食用、価格の低い飼料・工業用途などに向けられる。したがって、コメ輸入の増加は主食としての品種選択、国際米価、輸入先国の供給状況、加工企業の採算によるところが大きい。

 キャッサバ輸入が67.6%増加したことも、穀物輸入減少と表裏の関係にある。キャッサバは飼料、澱粉、アルコール、発酵製品の原料であるとともに、条件によってはトウモロコシを代替できる。国内産トウモロコシの保護や輸入トウモロコシの抑制が進むと、加工企業がキャッサバなどの代替原料を増やす可能性がある。砂糖輸入の増加も、国内糖料作物だけでは需要を満たしにくいことや、国際価格が輸入採算を左右した結果と考えられよう。

(4)構造的要因

 2025年の輸入構成は、中国農業が「主食用穀物では高い自給率を維持するが、油脂・飼料・加工原料では輸入に依存する」という二重構造を改めて示している。表によると、小麦、トウモロコシ、大麦、コウリャンの輸入は大幅に減ったが、大豆輸入は1億1183万トンに増加した。

 中国の大豆生産量は2025年に2091万トンまで増えたものの、輸入量の5分の1以下に過ぎない。食用油と飼料向けの大豆粕を大量に必要とする中国の搾油業、畜産業の規模を考えると、大豆輸入は短期間には代替できないだろう。

 肉類輸入の減少にも構造的背景がある。中国では豚肉・牛肉・鶏肉の国内生産能力が拡大しており、2025年の豚・牛・羊・家禽肉生産量は前年比4.2%増の1億72万トンとなった。豚肉は4.1%増、牛肉は2.8%増、鶏肉を含む家禽肉は6.7%増である。

 国内生産が増え、消費の伸びがそれを下回れば、輸入肉の必要量は減少する。したがって、2025年の肉類輸入減少は、一時的な関税だけではなく、中国畜産業の生産能力増大と消費低迷による需要の伸びの鈍化を反映した、構造的調整の一面もあろう。

2.2026年1~6月期と2025年1~6月期との比較およびその要因

(1)比較結果

 表によると、2026年1~6月の「粮食」輸入量は7106万トンで、前年同期比13.2%増加した。穀物・穀物粉は1903万トンで58.4%増、小麦・小麦粉は308万トンで57.5%増、大麦は816万トンで58.4%増、トウモロコシ・同粉は101万トンで28.2%増、コメ・コメ粉は243万トンで67.7%増、コウリャンは376万トンで77.4%増となった。

表 2026年、中国の食料輸入の動向
資料:中国海関総署資料から筆者作成。
  2025年 2026年
    単位 年間 前年増減比(%) 1-6月計 前年同期
増減比(%)
1-6月計 前年同期
増減比(%)
一次産品 粮食 万トン 14,056 -10.8 6,276 -25.4 7,106 13.2
 穀物と穀物粉 万トン 2,579 -48.6 1,202 -65.1 1,903 58.4
  小麦と小麦粉 万トン 398 -64.4 196 -78.9 308 57.5
  大麦 万トン 1,042 -26.8 515 -39.3 816 58.4
  トウモロコシとその粉 万トン 265 -80.6 79 -92.8 101 28.2
  コメとコメ粉 万トン 314 89.6 145 97.4 243 67.7
  コウリャン 万トン 454 -47.5 212 -53.7 376 77.4
 豆類 万トン 11,475 6.9 5,073 2.2 5,201 2.5
  大豆  万トン 11,183 6.5 4,937 1.8 5,015 1.5
乾燥・生鮮のウリ類・
果実およびナッツ類
万トン 908 13.4 476 7.5 480 0.8
キャッサバとその粉 万トン 1,056 67.6 620 91.0 411 -33.7
二次産品 肉類(内臓を含む) 万トン 609 -8.7 320 -2.7 311 -3.0
 牛肉(内臓を含む) 万トン 283 -2.8 132 -9.5 157 19.0
  牛肉 万トン 280 -2.5 130 -9.5 153 17.5
 豚肉(内臓を含む) 万トン 216 -5.5 115 3.4 98 -14.4
  豚肉 万トン 98 -9.0 54 4.9 38 -28.8
  羊肉 トン 338,973 -7.5 213,032 4.7 169,929 -20.2
 鶏肉 トン 265,780 -34.4 207,038 9.4 155,239 -25.0
乳製品 万トン 266 1.6 138 5.7 141 2.2
 牛乳 万トン 85 0.8 50 4.6 50 0.1
食用油 万トン 1,006 5.8 448 -0.6 524 16.9
 食用植物油 万トン 694 -3.2 319 -8.6 343 7.6
  豆油 万トン 35 22.5 3 -77.1 4 18.1
  パーム油 万トン 257 -8.2 107 -11.6 129 20.7
  菜種油およびからし種油 万トン 213 13.1 118 25.7 113 -3.8
砂糖 万トン 492 13.1 104 -19.7 114 9.6

 しかし、この増加率については、2025年同期の輸入量が極端に少なかったことに注意する必要がある。表によると、2025年1~6月の穀物・穀物粉は前年同期比65.1%減、小麦は78.9%減、トウモロコシは92.8%減、コウリャンは53.7%減であった。したがって、2026年の増加は、全面的な輸入拡大というより、2025年の輸入量が異常に低い水準だったことからの部分的回復、すなわち「低い比較基準による反動増」である。

 大豆は5015万トンで1.5%増にとどまり、すでに高水準にある大豆輸入がほぼ横ばいで推移した。キャッサバは411万トンで33.7%減少し、2025年の急増が反転した。肉類全体は311万トンで3.0%減少したが、牛肉は17.5%増えた一方、豚肉は28.8%減、羊肉は20.2%減、鶏肉は25.0%減となった。食用油は16.9%増、パーム油は20.7%増、砂糖は9.6%増となった。

(2)政策的要因

 2026年上半期の穀物輸入回復には、2025年中に実施された対米追加関税の一部解除が関係している。中国は2025年11月10日から、同年3月に米国産小麦、トウモロコシ、大豆、コウリャン、豚肉、牛肉などに課した追加関税措置を停止した。このため、2026年には米国産を含む調達選択肢が広がり、前年に延期・縮小された契約の一部が回復したと考えられる。

 ただし、中国政府が穀物輸入を全面的に自由化したわけではない。国内産穀物の販売と価格安定を優先する基本方針(品目別の輸入割当政策等が早晩、国際問題として表面化する可能性が否定できない)は続いており、トウモロコシ輸入は前年同期比28.2%増えても101万トンにすぎない。2025年1~6月の79万トンという極端な低水準からわずか22万トン増えたにすぎず、過去の通常水準への本格回復とはいえない。

 肉類では政策の影響が品目ごとに異なる。牛肉は、国内肉牛経営の悪化を受けて輸入管理が強化されてきたものの、2025年上半期の輸入減少の反動や、加工・外食向け需要によって2026年上半期には増加した。中国産牛肉の品質の悪さは有名なので、今後、輸入志向がさらに進むだろう。

 これに対し豚肉については、EU産豚肉・豚副産物に対する反ダンピング措置が2025年12月17日から実施され、税率は4.9~19.8%とされた。EUが主要供給元であるため、この措置は2026年上半期の豚肉輸入を抑える直接的要因となった。

(3)時事的要因

 2026年の穀物輸入の増加は、2025年に抑えられた輸入契約の再開、在庫補充、輸入価格の変化によるものである。特に大麦とコウリャンは、トウモロコシや飼料用小麦の代替原料として用いられるため、国内外の価格差によって輸入量が大きく変動する。2026年上半期には、大麦・コウリャンの国際価格や供給条件が相対的に有利となり、飼料・醸造企業が前年に減らした調達を戻したと考えられる。

 中国の飼料は、カロリーベースで80%以上をトウモロコシ、大豆、小麦の3品目が占め、畜産業の盛衰と穀物輸入の関係は非常に強いので、穀物輸入の動静については複眼的な見方が重要である。

 食用油とパーム油の増加も、2025年上半期の低水準からの反動に加え、大豆油、菜種油、パーム油間の価格差による。表によると、2025年1~6月のパーム油は11.6%減少していたが、2026年同期には20.7%増加した。パーム油は外食、食品加工、即席麺、菓子類、化学工業などに広く利用されるため、価格が他の植物油より有利になれば輸入が速やかに増加する性格がある。

 豚肉輸入の減少には、国内価格の急落が大きく影響した。2026年上半期の中国の豚肉生産量は前年同期比3.3%増、生体豚出荷頭数は1.7%増加した。6月上旬の生体豚買付価格は前年同期比約29%下落しており、国内豚肉の価格競争力が大幅に高まった。国内価格が安ければ、関税、輸送費、冷凍保管費を必要とする輸入豚肉は採算を失う。このため、中国政府は6月に生体豚生産能力の調整を求め、需給関係の改善を図る会議を開催したほどである。

(4)構造的要因

 2026年上半期にも、中国の輸入構造そのものは変わっていない。国内で大量生産できる穀物は、価格と在庫状況に応じて輸入量を政策的観点から調整できる。このため、小麦やトウモロコシは前年同期比では増えても、2024年以前の水準からみればなお少ない。他方、大豆は国内生産だけでは搾油・飼料需要を満たせず、そもそも政策的調整の場を欠くことから5000万トンを超える輸入が維持された。

 また、肉類については、国内畜産業の生産能力が輸入を代替し始めている。2026年上半期の豚・牛・羊・家禽肉生産量は5050万トンで4.3%増加した。とくに豚肉と鶏肉は国内供給が増え、消費の伸びが鈍いため、輸入減少が続きやすい。羊肉についても、人口増加の鈍化、外食需要の変化、他の肉類との代替関係が輸入を抑えている。

 以上から、2025年は、国内豊作、価格下落への対応、輸入調整、通商摩擦によって穀物輸入が急減した年であった。2026年上半期は、その低い水準から穀物輸入が部分的に回復したものの、大豆依存、主食用穀物の国内優先、国内畜産物による輸入肉の代替という基本構造は維持された。したがって、2026年の増加率だけをみて中国の食料輸入依存が再び全面的に高まったと判断することには留意が必要である。

 一方で、冒頭に触れたように中国の輸入食料品の質的構成が高級化しつつある点は注目すべきことなので、次回はこの点を取り上げよう。

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