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第15次五カ年計画と金融強国の建設

2026年09月25日

露口洋介

露口 洋介(つゆぐち ようすけ):帝京大学経済学部 教授

略歴

1980年東京大学法学部卒業、日本銀行入行。在中国大使館経済部書記官、日本銀行香港事務所次長、日本銀行初代北京事務所長などを経て、2011年日本銀行退職。信金中央金庫、日本大学を経て2018年4月より現職。著書に『中国経済のマクロ分析』(共著)、『東アジア地域協力の共同設計』(共著)、『中国資本市場の現状と課題』(共著)、『中国対外経済政策のリアリティー』(共著)など。

 中国人民銀行など政府の金融関係部門が「第15次五カ年計画」期間中の課題に関する記者説明会を開催した。中国人民銀行の説明部分を中心に、内容を検討することとしたい。

金融強国建設五カ年計画

 記者説明会は2026年9月10日に実施された。中国人民銀行の陸磊副総裁は、第15次五カ年計画期間中の金融面の総体的方針と具体的な計画を定めた「金融強国建設第15次五カ年計画」(以下「計画」)が制定されたことを公表し、概要を以下のように説明した。

「計画」は共産党の中央金融委員会の主導の下、各関連部門の協同によって制定された。全体的目標としては、2030年までに中国の特色ある現代金融体系の総体的枠組みを形成する。金融調節とコントロール政策の有効性を強化し、金融システムの構造を合理的に改善し、金融監督管理を厳密かつ強力に行い、金融リスクの防止・コントロールの精度と効果を高める。金融が経済社会の発展をサポートする機能を向上させ、金融関連の法治体系を完備し、金融面の対外開放を着実に進め、金融業の国際影響力と競争力を継続的に高めていく。2035年までに高度な適応力と競争力、包摂性を有する中国の特色ある金融システムを構築し、金融強国の建設に関して基盤を固める。

 また、「計画」は第15次五カ年計画期間の金融強国建設に向けた重点業務として、金融マクロ調節システムの健全化、金融監督管理の全面的な強化、金融リスクの防止と抑制の有効性の向上、実体経済への積極的かつ効果的な支援、金融の質の高い発展の促進、金融面の高水準の対外開放の拡大を明確に設定した。

人民銀行の改革発展計画

 これを受けて人民銀行は「人民銀行の第15次五カ年計画期間の改革発展計画」を制定し、行動方針を明らかにした。

 第1に、人民銀行の目標に焦点を当て、政策枠組みを改善する。人民銀行の業務の中心的目標は終始一貫して通貨価値の安定と金融安定であり、金融政策システムとマクロプルーデンス管理システムが政策枠組みの二つの支柱である。カウンターシクリカル(逆周期)かつ周期を超えた調節を適切に実施し、社会全体の資金調達額と広義通貨供給量の伸び率を価格の上昇を勘案した経済成長率に匹敵するレベルに保持する。金利形成の市場化を進め、金利の調節・コントロールと伝達メカニズムを改善する。人民元為替レートの形成に市場の機能を発揮させ、為替レートの弾力性を増強し、合理的均衡水準における基本的安定を保持する。

 第2に、実体経済に対する貢献という根本的趣旨に集中する。金融政策体系を改善し、重要な戦略や重点分野、弱点分野を的確にサポートし、新エネルギーへの転換を促進するなど金融の実体経済に対する貢献の質と効果を高める。科学技術、環境、包摂、養老、デジタルの5分野に対する資金配分を拡大する。

 第3に、金融市場の改善に集中する。開放的で包容力があり、活力と強靭さのある現代金融市場を建設し、資金調達構造を改善する。直接金融の比重を高め、市場化改革を深化させ、金融市場の価格発見・資源配分機能をさらに発揮させる。

 第4に、開放と改革を発展させ、金融分野の高水準の対外開放を促進する。人民元の国際化を推し進め、国際貿易と投融資において人民元の機能を拡充する。決済システムなど金融インフラのクロスボーダーの連結を強化する。人民元オフショア市場を発展させ、オフショア市場における人民元流動性の供給を豊富にする。オフショア人民元を決済する人民元クリアリング銀行の配置を増強する。多層的で広範囲をカバーする人民元クロスボーダー決済の体系を完備させ、人民元クロスボーダー決済システム(CIPS)の機能・サービスを拡充する。デジタル人民元のクロスボーダーの利用を積極的に推し進める。上海国際金融センターの建設を加速し、香港国際金融センターの地位を強固かつ強化する。グローバルな金融ガバナンスの改革に積極的に参加・推進する。

 第5に、中央銀行の職務基盤を全面的に地固めする。決済システムなどの金融インフラと中央銀行としての業務サービス体系の改善を進める。金融インフラをトップレベルで設計し、合理的な配置を推進する。デジタル人民元を着実に発展させる。中央銀行の法治とデジタル化を全面的に推進する。

金融政策上の具体的改革方針

 陸磊副総裁は金融政策上の具体的改革方針について、概要を以下のように説明した。

 金融政策の目標面では、通貨価値の安定という目標を堅持し、それによって経済成長を促進し、実体経済の質の高い発展を効果的にサポートしていく。数量型中間目標の機能を徐々に弱め、金利による調節コントロール機能をより重視していく。

 金融政策の手段面では、ベースマネーの供給メカニズムの改善を進めていく。準備預金制度を改善し、公開市場操作についてはさらに活発かつ正確に実施する。金利形成の市場化を促進し、調節・コントロールと伝達メカニズムを改善する。政策金利の主導的役割を増強し、マネーマーケットにおける短期金利が政策金利近辺で安定的に推移するよう導く。中央銀行の政策金利が市場の基準金利に伝わり、さらに各種金融市場の金利に伝播する経路をよりスムーズにしていく。

 為替レート面では、中国は管理変動相場制を実施しており、市場が為替レートの形成において果たす機能を堅持しつつ、同時に市場がバンドワゴン効果や合理的でない期待によって自己実現的に変動することを防止する。中国は為替レートの減価によって貿易競争で優位に立つ必要もなければその意図もない。近年中国の輸出構造は高度化し、企業の価格設定能力と為替リスクの管理能力が不断に増強されている。中国の貿易の為替レートに対する反応度は低下している。また、人民元の貿易決済における比率が上昇してきており、為替レートの変動が貿易に与える影響は減少している。

 金融政策の伝達経路の側面では、伝達経路の整備と期待管理の水準の引き上げを図る。信頼でき、常態化し、制度化した政策伝達経路を整備し、金融政策の伝達経路への理解とその権威の向上を促進する。マクロ調節の多くの目標の間の動態的均衡を促進する。

中国の金融国際化を注視すべき

 今回の記者会見で紹介された共産党中央主導による「金融強国建設第15次五カ年計画」では2035年までに金融強国の堅実な基盤を固めるとしている。国内的に金融政策の有効性の向上や金融システムの改善、金融市場の整備などが目指されており、その中で 2026年8月のコラム でも述べた金融調節の誘導目標をより短期の金利に移行させていくという方針などが改めて述べられている。

 さらに中国は対外的にも金融強国を目指しており、金融業の国際影響力と競争力を高めるとしている。また、人民元の国際化について、国際的な貿易と投融資における人民元の機能を拡大する方針としている。その手段として人民元クロスボーダー決済システム(CIPS)の強化とデジタル人民元のクロスボーダー決済での積極的な使用、上海オフショア金融センターでのオフショア人民元市場の拡充が挙げられた。これらの手段を2035年までの間に進めていく方針である。

 今後、日本の金融機関にとって国際業務面で中国の金融機関との競争が激化する可能性がある。また、国際金融市場における人民元の利用拡大に伴って円の利用が抑制されることも考えられる。国際的な円の利用の維持・拡大は安全保障面からも必要である。日本としても、中国の金融強国構想への対応を検討する必要があるだろう。

(了)


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