インド科学技術省(MoST)は11月26日、科学技術庁(DST)傘下のS.N.ボーズ国立基礎科学センターがインドのアショカ大学と共同で、がんの分子特性を読み取り、挙動を予測するAIフレームワーク「OncoMark」を開発したと発表した。研究成果は学術誌Communications Biologyに掲載された。

(出典:PIB)
がんは腫瘍の大きさや転移だけでなく、「ホールマーク」と呼ばれる一連の生物学的プログラムによって悪性化が進む。従来の腫瘍の大きさや転移を記述するTNM分類は進行度を示すものの、同じがんを持つ患者間でも生じる違いを生み出す分子レベルの要因を十分に説明できなかった。研究チームはこの課題に対し、腫瘍が示す分子レベルの変化を読み取り、挙動を予測することができるAIフレームワークを構築した。
OncoMarkの開発は、シュバシス・ハルダー(Subhasis Haldar)博士とデバヤン・グプタ(Debayan Gupta)博士が主導した。AIは14種類のがん種から得た310万個の単一細胞データを解析し、腫瘍状態を再現する合成「疑似生検」を生成した。この大規模データにより、転移、免疫回避、ゲノム不安定性など複数の腫瘍の病態がどのように相互作用し、腫瘍増殖や治療抵抗性を引き起こすかを学習した。
性能評価では、内部試験で精度99%以上、独立した5つのコホートでも96%以上を維持した。さらに8つの主要データセットから得られた2万件の患者サンプルで検証され、幅広い腫瘍タイプに適用できることが示された。研究チームは初めて、がんのステージ進行に伴いホールマーク活性が上昇する様子を視覚的に捉えることに成功したことになる。
OncoMarkは個々の患者の腫瘍でどの特徴が活性化しているかを明示でき、医師が標的薬を選択する際の根拠となる。また、標準的な病期分類では低リスクと判断される可能性がある腫瘍でも、実際には高い悪性度を示すケースを特定し、早期介入を支援することも可能となる。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部