2025年09月
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遺伝子よりも腸内細菌叢が自閉症の主因となる可能性 韓国POSTECH

韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は8月19日、韓国のバイオ企業イムノバイオーム(ImmunoBiome)社と共同で、自閉症スペクトラム症(ASD)の進行に腸内細菌叢と免疫応答が深く関与することを明らかにしたと発表した。研究成果は学術誌Nature Communicationsに掲載された。

ASDは米国で31人に1人が罹患するとされ、韓国や日本など東アジアではさらに高い発症率が報告されている。長らく遺伝要因に起因すると考えられてきたが、近年は腸内細菌や環境要因の関与が注目されている。特に患者の90%が消化器系の合併症を抱えており、腸内細菌叢の異常と症状の関連が示唆されてきた。

研究チームは、世界初の無菌状態の遺伝子改変マウス(BTBR)モデルを作製し、遺伝背景と腸内細菌叢、代謝物、免疫応答がASD症状に及ぼす影響を解析した。その結果、腸内細菌を欠いたマウスではASD様行動が減少し、遺伝子よりも腸内細菌叢が症状の主因である可能性が示された。さらに、神経炎症が抑制され、炎症性ミクログリアや新たに同定された脳内T細胞群が減少することも明らかになった。T細胞を枯渇させるとASD様症状の発症を防ぐことができ、腸管と免疫系、脳をつなぐシグナル経路の存在が浮き彫りになった。

共同研究を率いたイム・シンヒョク(Sin-Hyeog Im)教授は同社のCEOも務める。研究チームは16S-rRNAシーケンシングやメタボロミクスを用い、腸内細菌が興奮性のグルタミン酸と抑制性のGABAの比率を制御していることを確認した。このバランスが崩れると神経活動や行動に影響を及ぼす可能性がある。これに対応するため、イムノバイオームはAIを用いたin silicoモデルで有望なプロバイオティクス株を探索し、グルタミン酸を取り込みGABAを産生する能力を持つLimosilactobacillus reuteri IMB015株を特定した。ASDマウスに投与したところ、代謝バランスの回復、神経炎症の軽減、行動異常の改善が確認された。

(出典:POSTECH)

イムノバイオームは今後、IMB015株を生菌医薬品(LBP)として前臨床試験や臨床試験に進める計画である。同社はAvatiome™プラットフォームを用いて疾患治療用の菌株を選定・評価しており、ASDを含む難治性疾患に向けた腸内細菌治療の実用化を目指している。今回の成果はASDの原因解明と治療法開発に新たな道を拓くものとして期待される。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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