米国のスタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)は8月20日、韓国の低所得層が医療支出から得る健康改善効果が最も小さいことを明らかにしたと発表した。研究成果は学術誌Health Affairs Scholarに掲載された。
同研究は、2010~2018年の国民健康保険制度データを用い、韓国の成人を所得五分位(所得分布を5等分した区分)に分けて医療費と健康成果を比較したものである。分析には、健康関連の生活の質、平均寿命、25歳時点の質調整平均余命(QALE)が用いられ、医療投資の効率性が検証された。
結果として、最低所得層の成人はQALEが0.7年の増加にとどまり、第2・第3五分位では1.4年、第4五分位では1.3年、最高所得層では1.2年の増加が確認された。さらに、QALE1年当たりの医療費は最低所得層で7万8209ドルに達し、中所得層の3万1757~4万7831ドルに比べ著しく効率が低いことが分かった。
研究チームには、スタンフォード大学のカレン・エグルストン(Karen Eggleston)教授をはじめ、韓国の高麗大学、ソウル大学の教授、米国のハーバード大学が参加した。同教授は「一人当たりの医療支出は各所得層で大きな差がないにもかかわらず、最低所得層では健康改善の効果が小さいことが明らかになりました」と述べている。
この要因として、最低所得層に慢性疾患や喫煙・肥満などのリスク因子が多いこと、定期健診やがん検診の受診率が低いこと、さらに経済的制約によって予防医療やプライマリケアの利用が阻まれていることが挙げられる。また、高所得層で医療支出が最も高かった訳ではないことから、価値の低い医療サービスを多用している可能性も示された。
研究者らは、韓国の医療制度に残る構造的不平等を是正するため、次の改革を提言している。
研究成果は所得格差が大きい米国など他国にも教訓を与えるものとされる。著者らは「医療支出の増加が不平等を固定化させないためにも、効率と公平性を両立させる政策が急務である」と強調している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部