韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は6月18日、同校の研究チームが、中空シリコンナノチューブ構造で熱伝導を抑制し、廃熱を電気に変換する熱電素子の効率向上につながる仕組みを明らかにしたと発表した。研究成果は学術誌Nano Energyに掲載された。

(出典:POSTECH)
人工知能(AI)の利用に伴うデータセンターや電気自動車の電池、製造工程では大量の熱が発生し、その多くは大気中に捨てられている。温度差だけで発電する熱電素子は、産業施設の廃熱回収や電池冷却、宇宙探査機用の原子力電池などに応用できる。一方、主要材料にはビスマス(Bi)やテルル(Te)など希少金属を用いるものが多く、供給網の不安定さが課題となる。シリコンは豊富で既存の半導体製造工程との親和性も高いが、シリコン系熱電素子は効率の低さから実用化が進んでいない。
研究チームを率いたのは、POSTECH電気工学科・融合IT工学科のペク・チャンギ(Chang-Ki Baek)教授で、融合IT工学科博士課程のキム・ギヨン(Ki Yeong Kim)氏が参加した。熱電素子の効率向上には、熱の移動を抑えながら電気の流れを保つ必要があるが、構造を小さくすると熱伝導だけでなく電気伝導も低下しやすい。
研究チームは、中身が詰まった棒状のナノワイヤーと、内部が空洞の小さな管のようなナノチューブを比較した。ナノワイヤーは、直径がナノメートル程度の細いナノ構造である。実験の結果、ナノチューブの熱伝導率はナノワイヤーより約70%低かった。さらに、両構造の表面積比を同じにしても、ナノチューブは熱伝導率が約33%低く、中空構造そのものが熱の移動を抑える追加の仕組みを持つことが示された。
研究チームは、この効果の原因をフォノンの局在化に見いだした。フォノンは固体中の原子の集団振動を表す準粒子で、熱を運ぶ。フォノンの局在化とは、この振動が構造全体に広がらず、特定領域に閉じ込められる現象である。極低温や特殊構造で主に起こると考えられてきたこの現象が、比較的単純なナノチューブ構造で室温近くでも生じることを初めて示した。同教授は「希少材料に依存せず、韓国の半導体製造技術と高い互換性を持つこの手法は、次世代熱管理市場を先導することに貢献できます」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部