ナノプラスチックによる腸内バリア機能破綻の仕組みを明らかに 台湾・成功大学

台湾の成功大学(NCKU)は7月8日、ナノプラスチックが腸内細菌と宿主細胞の情報伝達を妨げ、腸内バリア機能の破綻を引き起こす仕組みを明らかにしたと発表した。研究成果は学術誌Nature Communicationsに掲載された。

本研究は、NCKU食品安全・衛生・リスク管理学部のシュー・ウェイシュエン(Wei-Hsuan Hsu)准教授と、台湾の嘉義大学(NCYU)園芸学部のリー・バオホン(Bao-Hong Lee)助教授による共同チームが実施した。マウスにナノサイズのポリスチレン微粒子を12週間摂取させ、腸内での影響を解析した。

実験の結果、ナノプラスチックが腸内細菌と腸細胞を刺激し、細胞外小胞の分泌を促すことが確認された。これらの小胞にはマイクロRNAが含まれ、腸内の有益な細菌を減少させ、有害な菌の増殖を促進し、細胞間の結合を弱体化させる。結果として、腸内のバリア機能が損なわれ、異物が血流に漏れ出す「リーキーガット症候群」を引き起こす可能性が示された。

シュー准教授は「ナノプラスチックは排出されにくく、内臓に蓄積して自然の防御機能を突破するおそれがあります」と述べ、「細胞外小胞は腸内細菌と宿主の間の重要な通信媒体であり、その機構の理解は新たな治療法の開発につながると考えています」と語った。

同チームは、植物においても同様の影響を確認している。水耕栽培のレタスにナノプラスチックを曝露したところ、特定の細菌が増殖し、細胞外小胞を介して植物の抗酸化能力を抑制し、萎れを引き起こしたという。

本研究は公開から3週間で約2万回閲覧され、Altmetricスコアで20万件超の同時掲載論文中の上位1%に選出された。また、台湾の国家科学及技術委員会(NSTC)の若手研究者プログラムと衛生福利部の支援を受け、2024年度Future Tech Awardも受賞している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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