台湾の中央研究院(Academia Sinica)の天文及天体物理学研究所(ASIAA)は7月15日、国際共同研究により太陽系外縁部で新たなセドナ型天体「2023 KQ14(愛称:アンモナイト)」を発見したと発表した。研究成果は学術誌Nature Astronomyに掲載された。

「アンモナイト」の愛称で呼ばれる遠方の太陽系天体のイラスト
Photo credit: ASIAA.
アンモナイトは近日点距離66天文単位(au)の軌道を持ち、極めて遠方で安定した運動を続けている。こうした軌道特性を持つ天体は「セドナ型天体(セドノイド)」と呼ばれ、アンモナイトはその4例目となる。
中でも特筆すべきは、アンモナイトの軌道が他のセドナ型天体とは正反対の向きを持つ点である。この発見により、太陽系外縁部の構造が従来の理解よりも複雑かつ多様である可能性が示された。筆頭著者であるチェン・イントン(Ying-Tung Chen)博士は「アンモナイトは、これまで観測が難しかった領域に位置し、外縁天体の分布を読み解く鍵となります」と話す。
観測は、ハワイ・マウナケア山にある8.2mのすばる望遠鏡で行われた。日本の国立天文台(NAOJ)とASIAAが共同開発した広視野カメラ「ハイパー・シュプリーム・カム」が使用され、さらにカナダ・フランス・ハワイ望遠鏡(CFHT)による追観測と、10年以上のアーカイブデータの解析により、軌道の正確なパラメータが明らかにされた。

アンモナイトの軌道(赤)と他の3つのセドノイドの軌道。中央の青色の円は海王星の軌道を示す
Photo credit: ASIAA.(出典:いずれも中央研究院)
シミュレーションの結果、アンモナイトの軌道は他天体との重力干渉をほとんど受けず、数十億年にわたり安定していることが確認された。責任著者のワン・シャンユー(Shiang-Yu Wang)博士は「アンモナイトの軌道構造は、太陽系形成初期に外的要因が働き、外縁部の天体の軌道が特異な形で形成された可能性を示しています。第9惑星仮説の検証にも大きく関わる成果です」と述べた。
本研究は、台湾、日本、カナダ、韓国、中国などの研究機関が参加する国際共同プロジェクト「太陽系外縁部の形成:氷の遺産(FOSSIL)」の一環であり、台湾では中央研究院および国家科学及技術委員会(NSTC)が支援している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部