頭頸部がんで免疫療法を回避、長期標的療法の影響 台湾・陽明交通大学

台湾の陽明交通大学(NYCU)は1月13日、頭頸部がん患者において長期の標的療法が腫瘍細胞の適応反応を高め、その後に実施される免疫療法の効果を低下させる仕組みを明らかにしたと発表した。研究成果は学術誌Cell Reports Medicineに掲載された。

研究結果から、頭頸部がん患者における標的治療の長期実施は腫瘍の警戒状態を高め、その後に行う免疫療法の効果を低下させる可能性があることが示された
(頭頸部がん患者の陽電子放出断層撮影<PET>画像)

免疫療法は、がん治療における重要な治療法として広く用いられているが、十分な効果が得られない症例も報告されている。NYCU臨床医学研究所の研究チームは、標的療法を長期間受けたがん細胞が治療圧力に適応し、免疫療法を回避する状態へと変化することを示した。

研究では、標的薬による慢性的な治療が腫瘍微小環境を再構築し、免疫細胞を活性化するシグナル伝達経路が抑制される現象が確認された。その中心的要因として、炎症性サイトカインである腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)の分泌増加が挙げられている。TNF-αは、インターフェロン応答を制御する転写因子STAT1の機能を阻害し、免疫細胞ががん細胞を認識・攻撃する能力が徐々に低下する「インターフェロンガンマ疲労」を引き起こすとされる。

ムー・ファ・ヤン(Muh-Hwa Yang)教授(中央)と研究チームメンバーら
(出典:いずれもNYCU)

また研究チームは、学術誌Advanced Scienceに発表した別の研究において、腫瘍から分泌される酵素RNase1がT細胞などの免疫細胞の活性を直接抑制する仕組みを明らかにした。この作用は、乳がん、肝がん、頭頸部がんなど複数のがん種で確認された。

研究を主導したムー・ファ・ヤン(Muh-Hwa Yang)教授は、「免疫療法はがん治療における大きな節目ですが、耐性の克服は依然として最大の臨床課題の一つです」と述べている。本研究結果は、がん治療を単一の介入としてではなく、タイミングや治療順序、そして生物学的状況が成功と失敗を左右する動的なプロセスとして捉えることの重要性を示している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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