ノーベル物理学賞受賞者セルジュ・アロシュ博士の講演開催 台湾・中央研究院

台湾の中央研究院(Academia Sinica)は1月19日、国際講演シリーズ「TAIWAN BRIDGES (台湾ブリッジズ)」の第3回として、2012年ノーベル物理学賞受賞者のセルジュ・アロシュ(Serge Haroche)博士による講演「レーザーと量子物理学」を1月16日に開催したことを発表した。

講演するセルジュ・アロシュ(Serge Haroche)博士
(出典:Academia Sinica)

開会にあたり、メイ・イン・チョウ(Mei-Yin Chou)副院長は、同博士が量子光学および空洞量子電気力学(Cavity QED)分野で果たした先駆的貢献により、単一量子系を分離して観測するという量子力学の長年の課題を克服し、現代の量子科学と精密計測の基盤を築いたと紹介した。

同博士のノーベル賞受賞研究は、個々の量子系を非破壊で測定・制御する実験手法の確立にある。博士は超高反射率の超伝導ミラーで構成した「光子トラップ」を考案し、光子を壊さずに長時間観測することを可能にした。この技術により、単一光子を最大0.1秒間空洞内に閉じ込め、リュードベリ原子を用いた非破壊測定が実現した。これらの成果は、シュレーディンガーの猫の概念を実験的に検証可能な領域へと拡張し、原子時計の高精度化や量子メモリー技術の基礎となっている。

講演は中央研究院原子分子科学研究所と物理学研究所の共催で行われ、司会を務めたユー・ジュ・リン(Yu-Ju Lin)副研究員が、量子物理学とレーザー技術が相互に発展してきた歴史を紹介した。同博士は、プランク、アインシュタイン、シュレーディンガーといった先駆者たちによって築かれた量子論の基礎から始め、誘導放出や二準位系といった概念がレーザーの発明によってどのように実現され、現代物理学のあり方を大きく変えたのかを説明した。

質疑応答では、AIの影響についても話題となり、同博士は、AIは物理学におけるレーザーのような強力な道具だが、人間の創造性や理解力を置き換えるものではないと述べた。基礎科学と応用技術は相互に補完し合うとし、若手研究者に対して不可能とされた課題に挑むことこそが科学の魅力だと語りかけた。

台湾ブリッジズでは、2025年11月から2026年にかけて平和、化学、物理学、生物医学、文学の分野でノーベル賞受賞者10人を招く予定だ。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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