台湾の中央研究院(Academia Sinica)は3月17日、国家衛生研究院(NHRI)などと共同で、可塑剤フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)(DEHP)への曝露が女性の乳がんリスク上昇に先行することを20年間の追跡調査で明らかにしたと発表した。研究成果は学術誌Proceedings of the National Academy of Sciencesに掲載された。


(出典:いずれもAcademia Sinica)
乳がんは台湾及び多くの先進国において女性に最も多いがんで、近年は若年化も課題となっている。研究チームは1991~2010年に約1万2000人の台湾人女性を追跡し、ベースライン時の尿試料を解析してDEHP代謝物とその後の浸潤性乳がん発症との関係を調べた。コホートを台湾がん登録センターと連携させることで、後に乳がんを発症した参加者を特定し、がんのない対照群と組み合わせて研究を行った。凍結保存試料から119人の乳がん患者と245人の対照群を抽出して比較した結果、尿中のDEHP代謝物濃度が高い女性ほど乳がん発症リスクが有意に高いことが分かった。
本研究の特徴は、DEHPの主要代謝物であるMEHPの割合を示すMEHP%を、代謝感受性の指標として用いた点にある。MEHP%が高い女性は、DEHPの代謝変換が進みにくく、乳がんリスクが高い傾向を示した。フタル酸エステル曝露とMEHP%がともに高い場合、乳がんリスクは対照群の2.68倍となった。
さらに、初潮年齢が14歳未満という要因が加わると、3つの要因が相乗的に作用し、乳がんリスクはリスク要因を持たない女性の7.52倍に上昇した。研究を主導した陳建仁(Chien-Jen Chen)院士は、環境要因に加えて代謝の個人差を組み込むことで、乳がんリスク評価の精度向上につながる可能性があると強調した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部