馬祖列島の「青の涙」に着想、次世代発光素材を開発 台湾・陽明交通大学

台湾の陽明交通大学(NYCU)は5月6日、同大学などの研究者らが馬祖列島の自然現象、「藍眼涙(青の涙)」として知られる青く光る波に着想を得て、次世代ディスプレイやセンシング、ウェアラブル技術への応用が期待される、重金属を含まない無毒の新しい発光材料を開発したと発表した。研究成果は学術誌JACS Auに掲載された。

本研究は、NYCU生物科学・技術学科のリー・ミンチア(Ming-Chia Li) 准教授の主導のもと、NYCUと日本の大阪工業大学の平井智康准教授の研究チームが共同で進めてきた。海洋微生物が放つ青い光に着目したリー准教授のチームは、引き伸ばしたり圧縮したりすると青色蛍光を発する、柔軟で透明なシリコーン素材を発見した。

このシリコーン素材は、圧縮または伸張時に青色の蛍光を発することが分かり、光電子ディスプレイ、生体医療用イメージングセンサー、ウェアラブル電子機器などへの応用が期待される

この発見は、研究室での試験中に偶然生まれた。大学院生たちが新しいシリコーン系素材を試作していた際、素材が機械的応力を受けると発光することに気づいたという。この現象は、波に刺激された微小な海洋生物が発光する馬祖列島の「藍眼涙」を連想させた。従来の発光材料と異なり、この素材は分子同士が近接してクラスター構造を形成することで蛍光を生み出す仕組みとなっている。

研究チームによれば、このメカニズムは光を生み出す新たな戦略であり、柔軟で環境負荷の少ない光学材料の実現につながる可能性がある。

本素材の大きな特徴の一つは、次世代の3Dイメージングや先進ディスプレイに不可欠とされる「円偏光(CPL)」を生成できる点だ。柔軟で伸縮性を備えたこの素材は、将来的に光電子ディスプレイ、生体医療用イメージングセンサー、ウェアラブル電子機器への応用が期待される。CPLベースの素材は回転する光を直接放出できるため、追加装置なしで、より自然で没入感のある3D映像を実現できる可能性がある。また、電子機器の薄型・軽量・フレキシブル化や、省エネルギー化への貢献も期待される。

NYCU生物科学・技術学科のリー・ミンチア (Ming-Chia Li) 准教授

本研究は、台湾における先進ポリマー・光学材料研究の発展を示すとともに、持続可能なディスプレイ技術や次世代バイオセンシング分野への新たな可能性を提示している。

リー・ミンチア (Ming-Chia Li) 准教授と研究チームメンバー
(出典:いずれもNYCU)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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