台湾の陽明交通大学(NYCU)は6月8日、同大学の研究者らが、無線通信の電波が届かない「死角(デッドゾーン)」を解消し、複雑な環境でもより安定した接続を実現する新たな通信技術を開発し、特許を取得したと発表した。

ジウンホン・ユ(Jiun-Hung Yu)准教授(中央)と研究チームメンバー
開発したのはNYCU通信工学研究所のジウンホン・ユ(Jiun-Hung Yu)准教授。技術の基盤となるのは再構成可能なインテリジェントサーフェス(RIS)と呼ばれる反射システムで、無線信号を利用者や機器に向けて動的に誘導できる。
従来の無線ネットワークでは、壁や建物が信号を遮断・減衰させることが多いが、RIS技術は周囲の壁や天井などを通信システムの能動的な構成要素に変える。このインテリジェントサーフェスは屋内の壁や天井、建物の外壁、ガラス窓、デジタル看板のほか、無人航空機(UAV)にも搭載できる。信号を知的に反射・操作することで、信号損失や干渉を抑え、接続品質を高める。
同准教授はこの技術を、信号源と利用者の位置を常に把握し、信号を最も必要とされる場所へ向け直す「スマートミラー」になぞらえる。交通拠点やコンサート会場、競技場など、多数の利用者が同時に接続し通信品質が低下しやすい環境で特に有用だという。
この技術は地上の無線通信にとどまらず、衛星通信システムへの応用も期待される。衛星信号を地上の利用者に正確に向け直すことで、通信インフラが限られる遠隔地や山間部、洋上、被災地などでのカバー範囲改善に寄与しうる。これは緊急対応や遠隔医療、遠隔教育などの重要な用途を支え、研究チームは農村部や遠隔地に安定したインターネット接続を提供することでデジタルデバイドの縮小にも貢献できると期待を寄せる。
高容量の無線ネットワークへの世界的な需要が高まるなか、RIS技術は次世代通信を実現する鍵として注目を集めている。今回特許を取得したRISシステムは、5Gの進化や次世代の6Gネットワーク、将来の衛星通信アーキテクチャーの発展に寄与しうる。より効率的な信号伝送を可能にすることで、スマートシティや自律システム、大規模なIoT(モノのインターネット)応用の拡大も後押しすると期待される。

NYCUが特許を取得した再構成可能なインテリジェントサーフェス(RIS)技術のイメージ図。無線・衛星信号を障害物を回避して誘導し、混雑した都市部や遠隔地、緊急対応時のカバー範囲改善、干渉低減、接続の安定化に役立つ
(出典:いずれもNYCU)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部