特定腸内細菌が脳内アミロイドβ蓄積の少なさと関連 台湾・陽明交通大学

台湾の陽明交通大学(NYCU)は7月1日、同大学公衆衛生研究所の研究チームが、腸内細菌の一種アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)が多い高齢者ほど、アルツハイマー病の主要な生物学的指標である脳内アミロイドβの蓄積が有意に少ないことを明らかにしたと発表した。研究成果は学術誌Alzheimer's Research & Therapyに掲載された。

腸脳軸の概念図。アッカーマンシア・ムシニフィラと腸内細菌群集、アルツハイマー病のバイオマーカーとの関連を示す。本研究は、腸内細菌叢の構成がアミロイドβの蓄積や脳の健康と関連する可能性を示唆している。

研究チームは、高齢者439人の便検体、アルツハイマー病のバイオマーカー、脳画像データを解析した。アッカーマンシア・ムシニフィラは、健康効果が注目される次世代プロバイオティクスで、過去の動物実験では代謝の改善、炎症の抑制、記憶力の向上との関連が示されている。ただし今回の結果は、同菌がアルツハイマー病を予防することを証明したものではない。

アルツハイマー病研究はこれまで脳内のアミロイドβ斑に注目が集まってきたが、近年は腸内細菌叢との関係にも関心が高まっている。腸内の微生物は免疫・代謝・神経の経路を通じて脳と情報をやり取りしており、この仕組みは「腸脳軸」と呼ばれる。

研究チームは高解像度のゲノムシーケンシングにより、細菌を種レベルで同定した。その結果、軽度認知障害かアルツハイマー病と関連する59種の細菌を特定。近縁の細菌でも、認知機能が健康な人に多い種と、認知機能が低下した人に多い種があった。さらに、腸内細菌は単独ではなく群集として働き、種間の相互作用が代謝機能を変化させ、アミロイド蓄積や神経変性と関連する可能性も示された。

本研究は腸内細菌の構成とアルツハイマー病のバイオマーカーとの間に有意な関連を特定し、腸脳軸に関する新たな知見をもたらした。ただし、因果関係の確立には、さらなる研究を必要とする。

研究を主導したNYCUのイー・ファン・チュアン(Yi-Fang Chuang)教授は、腸内細菌叢とアルツハイマー病のバイオマーカーには明確な関連が見られた一方、背後にある生物学的機序はまだ不明だと説明した。微生物の変化が病気の進行に関与するのか、神経変性の結果なのかを判断するには、今後の縦断研究が必要という。腸内細菌の組成は遺伝や食事、生活習慣により集団ごとに異なるため、欧米の研究結果をアジアの集団にそのまま一般化することは難しいとしている。

研究を主導したNYCUのイー・ファン・チュアン (Yi-Fang Chuang)教授
(出典:いずれもNYCU)

今回構築した、腸内細菌叢、脳画像、アルツハイマー病のバイオマーカーを結びつけた台湾で最も包括的なデータセットの一つは、今後の認知症研究の貴重な資源になるとしている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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