斜面崩壊とせき止め湖形成を早期検知、洪水被害軽減へ 台湾・陽明交通大学

台湾の陽明交通大学(NYCU)は7月14日、同大学の防災・水環境研究センター(DPWE)が花蓮県の馬太鞍(ファタアン)渓上流の斜面崩壊とせき止め湖の形成をいち早く検知し、監視・調査と洪水の早期警戒に取り組んでいると発表した。

台湾・花蓮県の馬太鞍渓上流域を上空から撮影した様子
<写真提供:林業・自然保育署(FANCA)花蓮分署>

NYCU土木工学科のチャオ・ウェイアン(Wei-An Chao)准教授は、リアルタイム地滑り監視システムで斜面の異常な振動を捉え、高さ200mの天然ダムが形成されつつあることを発見した。その後、貯水容量約9000万立方メートルのせき止め湖が生じ、DPWEは同湖を最初に発見したチームとなった。

NYCUの防災・水環境研究センター (DPWE)メンバー
(出典:いずれもNYCU)

「せき止め湖の厄介な点は、いつ形成されたのか分からないことです。以前は山林巡視員や登山者の発見を待つか、下流の水位が急低下してから把握していました」と同准教授は説明する。

同准教授が「地滑りハンター」と呼ぶシステムは、地滑りや土石流、水流の振動信号を捉え、せき止め湖の形成時に関係機関へ警報を送る。チームは微小地震信号を使う洪水早期警戒システムも設置。洪水が秒速約3~5mで進む一方、振動はより速く伝わることを利用し、10km以上下流の住民に約20分前の警報を出せるようにした。

異常検知の翌日、DPWEは台湾の林業・自然保育署(FANCA)の要請で調査を開始した。標高約1kmの山頂から崩れた土砂が2km滑り落ちて川をせき止めたもので、天然ダムは緩く、浸水で内部が空洞化する恐れもある。研究責任者のDPWEのリー・グオウェイ(Kuo-wei Li)助理研究員は、ドローンやLiDARデータで亀裂や浸水状況を監視している。

昨年9月、台風ラガサの豪雨で湖が決壊すると、付近に第2、第3のせき止め湖が形成された。斜面崩壊が続く限り、この状況は数年続く可能性がある。

DPWEのシェンシュエ・ヤン(Sheng Hsueh Yang)研究員は、リモートセンシング画像から貯水量や満水時期を算出し、決壊時の浸水範囲と水位変化を推定する。結果は災害リスク評価報告書としてFANCAなどに提供され、警報発令や避難判断の根拠となる。

DPWEのリン・チーピン(Chih-Ping Lin)センター長は「私たちは自然を制御するのではなく、共に生きようとしています。重要なのはリアルタイム監視と状況に応じた意思決定です。それにより災害時の損失を最小限に抑え、迅速に復旧できます」と語った。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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