界面工学で高性能な単層MoS2トランジスタを開発 台湾・陽明交通大学

台湾の陽明交通大学(NYCU)は8月11日、同大学と台湾積体電路製造(TSMC)社、中央研究院(Academia Sinica)の研究チームが、単層の二硫化モリブデン(MoS2)を用いた高性能トップゲート・トランジスタを作製し、高い相互コンダクタンスと極めて低いリーク電流、安定した動作を同時に実現したと発表した。研究成果は学術誌Nature Electronicsに掲載された。

NYCU電子物理学科のチャン教授の研究チームは、単層の二硫化モリブデン(MoS2)を用いた高性能トップゲート型トランジスタを開発し、二次元半導体が長年抱えてきた界面の課題に取り組んだ。
(出典:NYCU)

本研究はNYCU電子物理学科とAcademia Sinica応用科学研究センターのウェンハオ・チャン(Wen-Hao Chang)教授、TSMCのユリアナ・P・ラドゥ(Iuliana P. Radu)博士、NYCU半導体工学科のツンエン・リー(Tsung-En Lee)教授らのチームが共同で進め、国家科学技術委員会(NSTC)の「オングストローム半導体イニシアチブ」などの支援を受けた。

シリコン技術が物理的限界に近づくなか、原子1層の薄さを持つ二次元半導体は、極微細な寸法でも電流を精密に制御できる有力候補とされる。ただ、極端に薄いため外部の影響を受けやすく、電流制御に必要な絶縁層(ゲート誘電体)を上に形成する工程で表面が損傷しやすい。生じた欠陥が電子を散乱させ、動作速度と素子性能を低下させるため、絶縁層の薄膜化と効率的な電子輸送の両立が長年の課題であった。

研究チームは別の半導体材料を探すのではなく、界面そのものを設計し直した。エピタキシャル界面エンジニアリングと呼ばれる手法により、超高真空下で単層MoS2上に極薄のアルミニウム層を直接堆積させ、これを慎重に酸化させて厚さ約0.42ナノメートルの酸化アルミニウム層を形成した。この原子レベルに薄い酸化膜が、後続の誘電体材料を成長させる高品質な土台となり、MoS2チャネルとゲート誘電体の界面を改善して電子の移動を妨げにくくする。

完成したトランジスタは、大幅に薄膜化した誘電体構造と高い相互コンダクタンスを両立し、極微細な寸法でも世界最高水準のMoS2素子性能を示すとともに、極めて低いリーク電流と高い動作安定性を維持した。この成果は、界面の精密制御により、二次元半導体を実験室段階から実用的なチップへの応用に近づけられる可能性を示している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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