台湾の陽明交通大学(NYCU)は8月13日、同大学の研究チームの論文が、コンピューターアーキテクチャー国際シンポジウム(ISCA)に2年連続で採択されたと発表した。

ISCA 2025のポスターセッションにて、研究チームメンバーとイェ・ツンタイ(Tsung-Tai Yeh)教授(左)
(出典:NYCU)
ISCAは「コンピューターアーキテクチャーのオリンピック」とも称され、台湾からの採択は過去10年間、年平均1件未満だという。NYCU情報工学科のイェ・ツンタイ(Tsung-Tai Yeh)教授のチームは、2025年にAQB8を発表したのに続き、2026年はOmni-LUTが採択された。両研究は、人工知能(AI)のメモリー需要の急増と高精細グラフィックスの消費電力という課題に取り組む。大規模言語モデル(LLM)も超リアルな3Dレンダリングも、プロセッサーとメモリー間で膨大なデータを頻繁に転送する必要があり、時間とエネルギーを消費して処理の遅延と発熱を招く。
Omni-LUTはLLMの長文コンテキスト処理の限界を押し広げる研究である。マイクロソフト・リサーチは、ルックアップテーブル(LUT)と超低精度量子化で従来の計算を置き換える手法を提案したが、推論中に動的に生成されるキー・バリュー(KV)キャッシュは事前処理が難しく、量子化が課題だった。チームはGoogleの手法とは異なり、LUTアクセラレーターと統合できる新たな量子化機構を開発。KVキャッシュによるメモリー負荷を大幅に軽減し、従来のハードウェアで長文コンテキストのAI処理をより高速かつ安定して実行できるようにした。
一方、AQB8は3Dレンダリングを対象とする。無数の光線の経路をシミュレートするレイトレーシングは写実的な映像を生むが、膨大な計算とデータ転送を要する。チームは、視覚品質をほとんど損なわずデータを低精度で表現するアルゴリズムを開発し、データ移動を大幅に削減。モバイル機器でも低消費電力で映画品質のグラフィックスを描画できる可能性を示した。
現在、研究チームはレイトレーシング技術を量子回路シミュレーションに、メモリー圧縮手法を情報セキュリティーに応用している。量子化圧縮によって準同型暗号の効率を高める関連プロジェクトは、2025年クアルコム・イノベーション・フェローシップ東アジアを受賞した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部