2021年5月10日 JSTシンガポール事務所
2021年3月28日、在日インド大使館とインド科学技術庁(DST)の共催でIndia-Japan Webinar on Cyber-Physical Systemsが開催された。科学技術振興機構(JST)とDSTの協力ではサイバーフィジカルシステム(CPS)に関する日印共同研究も支援している。これと関連して、インドの「学際的なサイバーフィジカルシステムに関する国家ミッション」(NM-ICPS)の概要を以下の通り、紹介する。
インド政府はNM-ICPSを立ち上げ、DSTは今後5年間で366億ルピー(約530億円)の予算を投じて人材育成、研究、技術と製品の開発、商品化を含む取り組みを行い、CPSテクノロジーの強力な基盤とエコシステムを作ることを目指している。
このミッションは、15のテクノロジーイノベーションハブ(TIH)、6つのセクターアプリケーションハブ(SAH)、および4つの技術移転リサーチパーク(TTRP)のネットワークを通じて実施される。ハブとテクノロジーパークには明確な機能の境界はなく、テクノロジーのライフサイクル全体に対応し、他の外部プロジェクトやニーズに基づいた案件も引き受け、相互の強みを生かして相乗的な結果を生み出すことが期待されている。
NM-ICPSの最初のフェーズでは、次に示す領域に6つのTIHを確立することに焦点を当てている。
NM-ICPSの最初のフェーズは、SERB(Science and Engineering Research Board:科学技術研究委員会)によって実施される。SERBはインド科学技術庁の下にある機関で、科学と工学の研究を促進し、科学者、学術機関、研究開発研究所、産業関係者等に財政支援するために2009年に設立された。サイバーフィジカルシステムの技術革新ハブを設立・維持していくために、科学的卓越性、提案分野での豊富な経験、戦略的ビジョン、実績を持つ高い学術機関や研究開発機関からの提案が採用される。
TIHは、特定の領域の活動を主導する結節点となる。最先端の知識、能力、設備を備えたTIHは、全国で利用可能な専門知識を活用して、研究革新、世界クラスの技術、製品開発を促進するために、インドや海外の研究機関や研究所との連携を構築する。TIHは関連業界と緊密に協力して商用技術と製品を提供し、新興企業や起業家に信頼されるプラットフォームを提供するイノベーションエコシステムを構築する。
大学院インターンシップやフェローシップなどを通じて一流のスキルを備えた高度な知識を備えた人材の育成を行い、新興企業を育成し、若く意欲的な起業家をサポートする。 また、アイデアを製品に発展させるためのガイダンスとコワーキングスペースを提供して起業家になるための支援を行い、 学生のスタートアップのための初期資金援助を行う。 また、国際的な提携を活用してインドの研究をグローバルな取り組みと結びつけて 国際的なプロジェクトに参加する。
NM-ICPSに基づく各TIHの財政的支援が5年間の場合、4年目には資本の20〜30%は民間資本からのものである必要があり、5年以内に100%自立可能となることが必要とされる。そのためには以下についてのロードマップを作成する必要がある。
提案提出段階では業界とのパートナーシップは必須ではないが、業界と事前に提携している提案が優先される。またホスト機関は、土地と建物、コア施設を提供する必要があり、単一の場所でTIH用に最低3万平方フィートのスペースを確保する必要がある。TIHは最初の助成金を受け取ってから6か月以内に、ホスト機関によって会社として設立される必要があり、設立後にDST、ホスト機関、TIHの間で三者間協定に署名する必要がある。
TIHは政府および非政府機関、ベンチャーキャピタル機関を含む金融機関から資金を受け取ることができる。また、国際的なプロジェクトに参加し、資金援助を受けることができる。 また、学術研究機関、業界、その他の資金提供機関のプロジェクトをサポートすることができる。そして、学生の新興企業にサポートを提供し、出資または貸付の形でインキュベーションをサポートすることができる。また、インドと参加国/国際機関の間で半々のコストシェアリングベースで国際共同プロジェクトを実施できる。TIH同士の連携も可能である。
TIHはプロジェクトディレクター(PD)が率いる。TIHを推進するための管理経験とビジョンが必要であり、TIHに80%の時間を費やすことができる最低5人の専任教員が必要であり、そのうちの少なくとも1人がアカデミーのフェローであることが望ましい。そして質の高い出版物の実績と業界とのつながりを持つ若い教員や 他の機関からの協力者、国際的な協力者、現物および現金での財政支援を伴う業界パートナーで構成される。
TIHのホスト機関は評価の高い学術および研究開発機関でなければならず、インドの総合ランキング上位50位以内の教育機関のみが応募資格がある。また、エンジニアリングおよびテクノロジー分野の研究開発、技術開発、商品化などについて10年以上運営されており、CPS基礎技術の専門知識を有する研究開発機関が対象となり、以下の項目が考慮される。