医療用酸素の不足に窒素プラント技術を応用 インドの各大学、コロナ対策に貢献

2021年6月18日 JSTシンガポール事務所

インドではインド工科大学(IIT)各校を中心とした大学機関が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策に貢献する目的の研究成果を相次いで発表している。以下、いくつかの事例を紹介する。

事例1:インド工科大学ボンベイ校(IITB)

IITボンベイ校(IITB)は、COVID-19患者の治療のための医療用酸素の不足に対処するための解決策を開発した。成功したパイロットプロジェクトは単純な技術であり、PSA(圧力スイング吸着)窒素ユニットからPSA酸素ユニットへの変換である。窒素を酸素に代えるにはどうすればよいか? 「既存の窒素プラントを微調整し、分子のふるいをカーボンからゼオライトに変更すれば良い」と、プロジェクトを率いたIITBのミリンド・アトリー(Milind Atrey)研究開発学部長は答えを導いた。同学部長は「空気を原料とするこのような窒素プラントは、インド全土のさまざまな産業プラントで利用できる。したがってそれぞれが酸素発生器に代替できる可能性があり、現在の公衆衛生上の緊急事態を乗り切るのに役立つ」と期待を表明した。

このパイロットプロジェクトは、PSA窒素および酸素プラントの生産を扱うIITB、Tata Consulting Engineers、Spantech Engineersの共同作業であり、理論を実証するために、同校の冷凍極低温研究所のPSA窒素プラントが使われた。また、この研究を緊急に実施するために、3者で覚書が締結され、全国で活用できるSOP(標準仕様)が完成した。Spantech Engineersは、IITBのインフラである冷凍極低温ラボを使用して評価するために必要なプラントコンポーネントをIITBに設置した。実験のためのこのセットアップは3日以内で行われ、最初のテストが有望な結果を示した。

Spantech Engineersのラジェンドラ・タヒリアーニ(Rajendra Tahiliani)氏はIITBを1970年に卒業したOBであり、「IITBと連携して既存のインフラを使用して緊急酸素生成の革新的なソリューションに貢献できることをうれしく思う。現在の国家の危機において産業界とアカデミアの間のこのようなパートナーシップは重要である」と語った。

IITB学長で教授のスバシス・チョウドリ(Subhasis Chaudhuri)氏は「関係者全員を祝福し、このようなアカデミアと産業界のパートナーシップは、インドの成長と成功にとって非常に望ましく、不可欠である」と研究成果を歓迎した。

事例2:インド工科大学ハイデラバード校(IITH)

IITハイデラバード校(IITH)の研究者によって開発された「世界初の手頃な価格で長持ちする衛生製品」が発売された。この研究は、医用生体工学の准教授であり、Eaffo Care Innovation Pvtの創設者であるジョツネンドゥ・ギリ(Jyotsnendu Giri)博士が率いて、COVID-19ウイルスの拡散に対抗するための技術を開発した。発表によれば細菌の99.99%を即座に殺し、次の洗浄まで35日まで長持ちする保護ナノスケールコーティングを開発した。現在のパンデミックの状況下で非常に革新的な抗菌特性であり、インド政府認定の研究所によって試験と認定が行われ、IITHのキャンパスでフィールドテストされた。

IITHのB. S. マーティ(B.S.Murty)学長は、今回の研究について「常に最先端の研究の最前線にいる。特にこのパンデミックの状況でそのことが何度も証明されている。IITHは、低コストの人工呼吸器、効果的なマスク、モバイルアプリ、高速COVID-19検査キットなど、多くのソリューションを提供してきた。今回の研究成果もCOVID-19と戦うためにIITHから生まれた発明の1つである。私はIITHを人類のための技術の発明と革新を行う機関と定義しており、IITHがそのような多くの斬新な革新を提供し続けると確信している」と述べた。

今回、革新的な「Durokea Technology」を使用した製品である「Durokea S」、「DuroKea M」、「DuroKea H」、「DuroKea H Aqua」は、接着性ナノ製剤である。すでにインターネットで、表面消毒剤、ハンドサニタイザー、抗ウイルスマスクコーティングスプレーとして販売されており、IITHのイノベーションの成果であることが記載されている。

事例3:インド工科大学ロパール校(IIT Ropar)

IITロパール校ではポータブルな技術を使った伝統的で環境に優しい移動式火葬システム(下の写真)を開発した。これは木材を使用しているにもかかわらず、無煙火葬を行う技術を開発し、環境に配慮した技術である。これを開発した IITロパール校のハープリート・シン(Harpreet Singh) 教授は同校の産業コンサルティング学部長である。

このようにIIT各校の事例からインドでは大学研究機関がCOVID-19対策への貢献に取り組んでいることが分かる。