科学出版物の伸び、世界水準上回る 「2019‐20年インド研究開発統計」

2021年7月7日 西川 裕治(元 JST インドリエゾンオフィサー)

インド科学技術庁(DST)が2020年12月付で発表した「2019‐20年研究開発統計」(RESEARCH AND DEVELOPMENT STATISTICS)に記載されているハイライト(要点)を以下の通り、紹介する。これはインドにおける研究開発(R&D)活動の概要・全貌を把握する上で重要な基礎情報である。

<ハイライト>

  • 2017年から18年にかけてのインドのR&D活動への投資総額は、1兆1,382億ルピー(約1兆8577億円)のレベルに達した。2018年から2019年にかけては、1兆2,384ルピーと推定されている。
  • 2017-18年と2018-19年には、それぞれ国民総生産(GNP)の0.7%がR&Dに費やされた。
  • 国の研究開発費に占める民間部門の割合は、2010-11年の32.1%から2017-18年の36.8%に増加した。
  • 2017年から18年にかけての国のR&D支出に占める中央政府、州政府、高等教育、公共部門の産業の割合は、それぞれ45.4%、6.4%、6.8%、4.6% だった。
  • 高等教育部門を除く研究機関部門では、総支出の約23.9%が基礎研究に、36.9%が応用研究に、32.4%が実験開発に、残り6.8%が支援活動に費やされた。
  • 2017年から2018年にかけて、総研究開発費の63.2%が政府財源から支出され、36.8%が民間財源から支出された。
  • 中央政府が負担した研究開発費の84.4%は、
    • CSIR(Council of Scientific & Industrial Research)
    • DRDO(Defence Research and Development Organisation)
    • DAE(Department of Atomic Energy)
    • DBT(Department of Biotechnology)
    • DST(Department of Science and Technology)、
    • DOS(Department of Space)、
    • MES(Military Engineer Services)、
    • ICAR(Indian Council of Agricultural Research)、
    • ICMR(Indian Council of Medical Research)、
    • MEITY(Ministry of Electronics and Information Technology)、
    • MNRE(Ministry of New and Renewable Energy)、
    • MOEFCC(Ministry of Environment, Forest and Climate Change)
    • -の12の主要な科学研究機関で使われたもの。主要な科学機関の中で、DRDOだけで31.6%を占めている。
  • 2017年から2018年にかけて、国営セクターはR&D活動に726億ルピーを費やした。国営セクターによる研究開発活動への総投資の約88%は、農業および関連地域の開発に向けられたもの。
  • 産業部門はR&D活動に4,710億ルピーを費やし、2017年から2018年にかけて、全国のR&D支出の41.4%を占めた。
  • インドの1人当たりの研究開発費は、2007-08年のPPP(購買力平価)$29.2(約3,200円)から2017-18年のPPP$47.2に増加した。
  • 研究開発人員は、2015年の28.3万人から2018年には34.2万人に増加した。
  • 2018年には、約55.2万人が国内の研究開発施設で雇用された。このうち61.1%が研究開発活動を行っており、17.9%が補助的な活動を、20.3%が管理および非技術的サポートを提供した。
  • R&D活動に直接従事する女性は56,747人で、R&D人材全体の16.6%を占めている。
  • インドの人口100万人あたりの研究者数は、2015年の218人から2017年には255人に増加した。
  • インドの研究成果の大幅な増加は、出版物データベースに反映されている。引用文献データベースSCOPUSでは、2011年の90,864件から2016年の136,238件へと50%増加した。科学技術分野のデータベースSCIでは、2011年の47,081件から2016年の64,267件に36.5%増加した。全米科学財団(NSF)のデータベースでは、2011年の74,143件から2018年の135,788件へと83.1%増加した。
  • SCOPUSおよびSCIデータベースによると、2011年から2016年までのインドの科学出版物の伸びは、世界平均の1.9%と3.7%に対して、それぞれ8.4%と6.4%であった。NSFデータベースでは、世界平均の4.9%に対して12.9%であった。
  • NSF、SCOPUS、SCIデータベースによると、インドは2018年の科学出版物でそれぞれ3位、5位、9位にランクされた。インドは、中国を除けば、新興5カ国(BRICS)や多くの先進国、または発展途上国よりも上位にランクされている。
  • 2017-18年に13,045件の特許が登録された。そのうち1,937件の特許がインド人によって登録された。
  • 2017~18年にインド人がインド特許庁に出願した15,550件の特許のうち、65%がマハラシュトラ州、カルナータカ州、タミルナードゥ州、デリー州から提出された。
  • 2017年から18年の間にインドで外国人が出願した合計32,304件の特許のうち、米国が56.3%のシェアでリストのトップであった。
  • 2018年から2019年にかけて、993の大学(University)とみなし大学(Deemed University)、127の国家重要機関(IIT等のInstitute of National Importance)、39,931の単科大学(College)が国内で高等教育を実施している。
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