AsianScientist - 考古学者たちがインドのグジャラート州で古代の鍋を調べたところ、この地域のインダス文明の調理形態が明らかになった。
インド西部のグジャラート地域は、恐竜の化石の発掘から古代の樹木の種類の発見まで、何十年にもわたって南アジアの考古学研究で注目されてきた。この地域では、青銅器時代の鍋や器が発掘されているため、特にインダス文明が知られている。
考古学者チームが新しく調査を行い、これらの鍋の中に残された物を綿密に分析したところ、古代インダス文明の食材はさまざまなものを使い、調理形態は非常に多様なものであったことが明らかになった。チームは、当時の人々が、反芻(はんすう)動物以外のさまざまな脂肪のほか、豆類、地下茎、根茎、根のデンプンを処理していたことを発見した。
この調査は、グジャラート州マハラジャサヤジラオ大学の考古学者であるP・アジトプラサド (P. Ajithprasad) 氏と、スペインのポンペウファブラ大学のマルコ・マデラ (Marco Madella) 氏が主導する北グジャラート考古学プロジェクトの一環である。このプロジェクトを通じて、チームはこの地域の古代の住民が利用した食べ物について多くのことを知ることができた。
しかし、論文の筆頭著者であるフアン・ホセ・ガルシアグラネロ (Juan José García-Granero) 氏はAsian Scientist 誌に「これらの材料がどのように調理され、食事とされたのかについてはほとんど知られていませんでした。そこで今回の調査の目的はこの謎を解くことでした」と語る。彼は、スペイン・バルセロナの国立研究評議会の考古学者である。
共著者兼考古学者であるバルセロナのポンペウファブラ大学のアクシャイェタ・スルヤナラヤン (Akshyeta Suryanarayan) 氏は、Asian Scientist 誌に「私たちは土器に吸収された残留物の調査と容器や砥石(といし)のデンプン粒分析を組み合わせることで、全体像を把握しようとしました」と明かす。
スルヤナラヤン氏と彼女のチームは、28個の古代の容器を調べた。チームは、デンプン粒分析と脂質残留分析(これら2つの方法は、今まで南アジアの考古学では普及していなかった)を組み合わせてみたところ、過去にさまざまな種類の食品がどのように処理され、消費されていたのかが分かった。
チームは発掘された陶器の小片を取り、その表面部分を取り除き、陶器を砕いて細かい粉にした。そして、さまざまなろ過技術と溶媒を使用してデンプンと脂質を抽出した。チームは脂質分子の種類を特定させるためにクロマトグラフィーや質量分析などのツールを採用した。特に脂肪に関しては、チームは同位体分析を使用することで、古代の容器に存在していた脂肪がヤギ、ヒツジ、ウシなどの反芻動物のものか、あるいはブタやウサギなどの他の雑食動物のものであるのかを区別することができた。
青銅器時代のグジャラート北部の人々はさまざまな方法で食材を入手したようである。在来種ではない(つまり外部からもたらされた)小麦、大麦、ライ麦などの穀物が見つかった場所もあれば、豆のデンプンと生姜の痕跡が見つかった場所もあった。
インド人考古学者でありスペイン国立研究評議会で勤務するチャルスミタ・ガデカー (Charusmita Gadekar) 氏は「古代の食生活形態の研究は、何を食べ、どのように調理したかという食事の選択の元となる要素を深く理解することが可能となり、考古学者がマクロ的な地域のパターンを探す役に立ちます」と説明する。ガデカー氏はこの新しい調査に参加してはいなかった。
しかし、インドのプネにあるデカンカレッジ大学院研究所の考古学者であるバサント・シンデ (Vasant Shinde) 氏は、「この調査は単なるヒントであり、結論を出すには十分ではありません」と指摘する。シンデ氏も調査に参加しておらず、古代の人々が居住していたこのような生態系ゾーンは何千とあるため、調査結果を単純化すべきではないと考えている。
「この段階では、調査をさらに大きく拡大する必要があります。さまざまな機関の多くの学者がこの種の調査を行わなければなりません」とシンデ氏は話している。
(2022年07月19日公開)