現地で取材したインドのインスパイア―賞最終選考会・表彰式 JSTは理系高校生らの招聘事業で貢献

2022年12月02日

西川 裕治(にしかわ・ゆうじ)

西川 裕治(にしかわ・ゆうじ):

科学技術国際交流センター (JISTEC) 上席調査研究員

元JSTインド代表 (2015~2018年)

インドのインスパイア―賞(INSPIRE Awards MANAK)の第9回全国レベル展示選考会(National Level Exhibition and Project Competition: NLEPC) が2022年9月14 日と15 日の2日間、ニューデリー市内で開催され、一般にも公開された。また、科学技術振興機構(JST)からは筆者含め2名が招待され出席した。

これは毎年定期開催されるインスパイア賞の重要なイベント。インド科学技術庁 (Department of Science and Technology: DST)、インド政府、および DST傘下の独立機関である国家イノベーション財団(National Innovation Foundation: NIF) が共同で実施するインドの若者(8~10年生)向けの科学技術イノベーションに関連する基幹プログラムである。

正式には、INSPIRE Awards-MANAK(Million Minds Augmenting National Aspirations and Knowledge)と名付けられたこのイベントは、「国家レベルでイノベーション創出に向けた大志と知識を鼓舞するための100万の発想・思い」という意味を持つ大規模なコンテストであり、DSTが推進する重要なイノベーション促進および人材開発プログラムである。

今回は、2020年から始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)禍の中での募集にも拘わらず、インドの全州と政府直轄区(UT)から合計653,000人から応募が寄せられ、いくつかの選考会を経て、その中の556人が全国レベル最終選考会に残った。

展示選考会を主催した科学技術省 (DST) の上級顧問アキレシュ・グプタ(Akhilesh Gupta)博士はじめ審査員らは、展示会場内で全国各地から参加した優秀な学生たちと交流した。学生たちは自分たちのイノベーション(発明・発想)について、訪問者と審査員に彼らの応募作品の優位性を説明。そして、トップ60人の応募作品が最終的に選ばれ、9月16日の表彰式ではジテンドラ・シン(Jitendra Singh)科学技術相から直接賞が授与された。

一方、科学技術振興機構(JST)は、2014年に「さくらサイエンスプログラム」(SSP)という優秀な若手理系人材の短期招聘事業をスタートし、インドでは2015年からその招聘への参加が開始された。SSPの中で、JSTによる直接招聘プログラムの一つで高校生向けの「さくらサイエンス・ハイスクールプログラム(SSHP)」では2015年以降、毎年インドからは約200名の優秀な理系高校生が招聘されてきた。そのうち、インスパイア―賞でトップ60位に選ばれた高校生が、毎年DSTにより送り出されてきた。

SSHPはCOVID-19の影響で2020年度、21年度の招聘を中止したが、2022年度から部分的に再開されている。インドからは2023年度のSSHPで、2022年度および前年2021年度のインスパイア―賞・最終選考で表彰されたトップ60人(計120人)の中から、年齢等を考慮して選抜され、日本に派遣されることが期待されている。

展示ブースで審査員らに対し各自のイノベーションを真剣に説明する参加者ら(左)
(PIBリリースより)

ジテンドラ・シン科学技術相(左から3人目)から最優秀賞を授与される高校生 (筆者撮影)

最終選考会で表彰された60名は、ジテンドラ・シン科学技術相らと記念写真に収まった (筆者撮影)

前年度(2021年度)の受賞者60名は、COVID-19 の影響でオンライン表彰式で賞が授与されたため、今回の表彰式に全員が招待されて記念写真に収まった (筆者撮影)

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