【AsianScientist】 インドの鳥の大幅減少、市民科学で明らかに

研究者たちは、バードウォッチャーが市民科学プラットフォームであるeBirdに提供したデータを用いて、942種の鳥類の現状を調査した。(2025年10月1日公開)

新たな調査から、インドでは多くの鳥類が大幅に減少していることが明らかになり、対象を絞った持続的な保全活動を緊急に行うべきことが分かった。

「インドの鳥類の現状2023」は研究機関と保全団体のコンソーシアムが作成した報告書である。この報告書はグローバル・サウスにおける最大規模の生物多様性モニタリング活動の一つであり、数千人のバードウォッチャーが市民科学プラットフォームである「eBird」に提供されたデータを用いて、942種の鳥類の現状を評価している。

ベンガルールに所在する国立生物科学センターの野生生物生物学保全プログラムのフェローであるヴィヴェック・ラマチャンドラン (Vivek Ramachandran) 氏は「私たちの調査結果は、客観的な現実を明らかにしました。インドの多様な鳥類の個体群が大幅な減少に直面しており、協力して保全活動を行うことが直ちに必要であることをはっきりと示しています」と述べた。同氏はこの調査報告書の著者の一人である。

研究チームは、204種が長い時間をかけて既に減少しており、さらに142種が現在減少しつつあると明らかにした。保全の緊急性に関しては、178種が保全優先度「高」、323種が「中」、441種が「低」に分類され、この地域の野生生物保護の問題がいかに大きいかを表している。

最も減少が顕著なのは、特殊な食性を持つ種(脊椎動物、死肉、無脊椎動物などを食する)であり、長期的な個体数減少は平均25%を超えていた。一方、果実や花の蜜を食する種は、個体数が横ばい、あるいは増加傾向であった。

この調査から、特に草原、低木地帯、湿地などに生息する種の個体数が最も急激に減少していることが分かった。冬にインドにやって来る渡り鳥も、留鳥よりも急激に減少しており、このことも、さらに警戒感を高めている。

市民科学者によって収集されたバードウォッチングデータの使用にあたって、研究チームは地域間のばらつきやバードウォッチャーの観察量の差を考慮する手法を開発して、一般的な問題を解決し、ボランティアによって生成されたデータからも信頼性の高い科学的結論を導き出せるようにした。

ラマチャンドラン氏は「この分析では、eBirdプラットフォームの市民科学データを活用したのですが、この半構造化データを整備し、整理し、分析してバイアスを取り除くために、堅牢な手法を開発しました。このシステムを使うことで、これまで以上に多くの鳥の種の評価が可能になり、従来型の調査を行うには資源が限られている地域では、プロトタイプとなると考えられています」と述べている。

研究チームは、eBirdデータの利用における主な課題の一つは、市民科学者の観察量のばらつきであると語る。チームは、全員のバードウォッチングに費やした時間や距離を同じにしようと試みるのではなく、観察した種の数に基づいてチェックリストを比較した。これにより、バードウォッチャー間のデータの比較が容易になった。

eBirdの主な強みは、その記録の完全性である。バードウォッチャーはチェックリストの「完了」に印を付ければ、確認したすべての種を報告したことになる。チームはデータの完全性を確保するために、このチェックリストのみを使用した。

この研究は、従来の調査では限界がある地域でも新しい手法を使えば生物多様性を評価できること、そして市民科学を厳密な手法及び計算ツールを組み合わせれば、目立つ知識格差を大々的に埋めることができることを示している。

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