2021年06月
トップ  > インド科学技術ニュース> 2021年06月

EV用「低コストAC充電ポイントのインド規格」公表へ

インド政府は電気自動車(EV)普及を強力に推進している。いったんは「2030年までに100%のEV化目標」を発表したが、その後の自動車業界等の困惑や要望を受けて、2018年にシン電力相は「2030年までに国内の自動車の30%をEVにすべきだ」と言明するなど、より現実的な目標設定を示した。

インドのデリー首都圏政府(州政府に相当)は2020年8月に、雇用創出を通じて首都圏の経済を底上げし、かつ、大気汚染の緩和を目的として、独自の電気自動車の普及促進策を発表。また、インド政府は2019年4月からは、補助金の支給などを通じて電気自動車の普及を目指す「EV生産・普及促進 (FAME)インディア」の第2期をスタートするなど、インドのEV化政策は着実に進んでいる。 そしてインド政府・主席科学顧問事務所は2021年5月、「低コストAC充電ポイント (LAC) のインド規格」の見通しを公表した。その内容は以下の通りである。

「EV採用を加速する革新的で低コストの充電インフラストラクチャ―、LAC のインド規格リリースへ」

近日中に公表が予定されるインド規格により、インドの市町村は、電動二輪車と三輪車の採用を加速できる革新的な低コストのEV充電ポイントの恩恵を享受できるようになり、この国が必要とするEV充電インフラの急速なスケールアップが可能となる。

EVを促進するためのインドの 「Transformative Mobility」プログラムの目的は、二酸化炭素(CO2)排出量を削減し、大気の質を改善し、原油輸入への依存を減らすことである。NITI-Aayog(下記、注1)のTransformative Mobility and Battery Storage政策によって実施された、いくつかのイニシアチブと FAME-2 インセンティブ(同、注2)の立ち上げは、インドでのEVの生産と需要を刺激することを目的としている。しかし、消費者がEVを採用するかどうかは、充電インフラが簡単に利用できるかにも依存する。潜在的な購入者は、家から離れた場所で車の充電設備を確実に見つける必要があるからだ。

内燃機関 (ICE)搭載の二輪車および三輪車のシェアは、インドの全車両販売の約84%。そのため、EVの採用が最も早いのは二輪車と三輪車になると考えられる。また、2025年までに年間400万台の自動車が販売され、2030年までに1,000万台近くに増えると予測されている。

このセクターにサービスを提供する充電ソリューションは、拡張性が高く、一般の人が簡単にアクセスできる必要がある。また、相互運用性をサポートし手頃な価格である必要もある。世界中で開発されたほとんどのシステムは、より高レベルの電力に対応しており、広範囲に展開するには非常に高価である。インド政府の主任科学顧問(PSA)である科学技術庁(DST)は、NITI Aayogチームと緊密に連携して課題に取り組んでいる。

EVメーカー、自動車および電子部品のサプライヤー、電力会社、通信サービス・プロバイダーを含むすべての主要な利害関係者が参加する委員会は、仕様の開発、製品のプロトタイプの作成、提案された規格のテストと検証を行うために、ファーストトラックモードで作業を実施した。これらは、インド規格局 (BIS)によって正式に発行される予定。

このグループでは、目標価格を3,500インドルピー(約50米ドル)未満に設定し、スマートフォンで操作するスマートAC充電ポイントで、安価なEV充電インフラに関して世界的なブレークスルーを実現する。規格の迅速な開発は、業界と政府との緊密な連携、入念なテストと検証により成功に至っている。このLACにより、最大3kWの電力をeスクーターとe三輪車に充電できる。ユーザーのスマートフォンは、低電力のBluetoothを介してLACと通信し、料金の支払いと分析を可能とするバックエンドにリンクされる。ユーザーのスマートフォンでは、複数アカウントと支払いオプションが使用できる。

インドの規格に従って、いくつかのインドの製造業者が既にこのチャージポイントデバイスの製造に乗り出しており、目標価格は低く抑えられ3,500ルピー程度となっている。LACデバイスは拡張性が高く、220V/15Aの単相回線が利用できる場所ならどこでも展開できるように設計されている。これは、主に地下鉄や鉄道の駅の駐車場、ショッピング モール、病院、オフィスコンプレックス、アパート、さらにはキラナ(小規模個人商店)やその他の店舗を視野に入れている。

インド規格の草案は、BIS電気自動車規格委員会によって取り上げられた。規格の正式なリリースは、サンプル製品の実地試験と耐久試験が完了を経て、2カ月以内に行われる予定で、EV向けの大量かつ低コストの充電インフラに対応する新しい産業部門が出現することが期待されている。

充電インフラストラクチャに関するDST-PSAOグループの議長であるV. スマントラ(Sumantran)博士は、「産業界と政府機関が協力して国家目標に取り組むことで、驚くべき進歩を迅速に達成することができる。さらに、この取り組みは、インテリジェントなコストイノベーションの可能性をインドにもたらした。インドでの厳しい価格制約により、コストとスケーラビリティの両方を念頭に置いて問題に対処する必要がある」と見ている。

NITI Aayog副会長のラジブ・クマール(Rajiv Kumar)博士は「高価な充電ステーションではなく、充電ポイントを重視することで、次の論理的なステップとして、軽電気自動車セグメントのLAC充電規格を開発するためのチームによる取り組みが加速した」と話している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る