2021年06月
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単層二硫化モリブデンで不揮発メモリー効果のメカニズム解明 インド理科大学院

インド理科大学院( IISc)の研究チームは5月22日、高信頼性かつ低消費電力でデータ処理と保存を1つのデバイスで行うことに役立つ、単層の二硫化モリブデンにおける不揮発メモリー効果のメカニズムをシミュレーションにより解明したと発表した。

バンガロールにあるインド理科大学院のサンタヌ・マハパトラ(Santanu Mahapatra)教授率いる電子工学研究チームが実施したコンピュータシミュレーションにより、単層の二硫化モリブデンの原子再配列により不揮発性メモリー効果が発現することが明らかになった。この新しいタイプのメモリーは、抵抗性メモリーと呼ばれ、電源を切ってもデータが保持されるため、低消費電力を実現可能であると考えられている。

単層の二硫化モリブデンは硫黄原子の欠損を有し、このような欠陥があることで強い電界の下で抵抗が変化する。このような不揮発かつ可逆的な抵抗変化により不揮発メモリー効果が生じるが、そのメカニズムは明らかになっていなかった。

そこで研究チームは、単層の二硫化モリブデンにおける結合の切断と形成について、分子動力学シミュレーションを行った。その結果、臨界電界が発生する際に、硫黄空孔の真上か真下にあるほとんどの硫黄原子が垂直方向に移動し、隣接する原子とより強い結合を形成することを発見した。これにより、局所的な金属状態、すなわち導電性の仮想フィラメントが形成される。局所的な金属状態は電界が取り除かれても維持されるが、適切な電界と局所的な高温を加えることで、結合が弱まり硫黄原子が元の位置に戻る。それにより、メモリー効果は解除されデバイスはリセットされるという。

これらの原理により制御できる不揮発性メモリー効果のオンオフは、不揮発性メモリーデバイスの開発に利用できる可能性がある、と研究者らは話している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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