インド工科大学ボンベイ校(IITB)は6月2日 、酸化コバルトの触媒に磁性を加えることにより、水素ガスの生成スピードを高速化できると発表した。
水素ガスを生成するための化学反応は、水に加えて外部からのエネルギーを必要とする。同校の研究者チームは、新しいタイプの触媒を使用し、これまでよりも少ないエネルギーで、しかもより高速に、水から水素を抽出することに成功した。
通常、水から水素を分離する場合、水に挿入した2つの電極間に電流を流して分離する電気分解という方法が用いられる。プラチナ、ロジウム、イリジウムなどの金属がこの電気分解を促進することは知られているが、こうした金属は高価なのが難点であった。
そこで同チームは、より高いイオン価(他化合物との電子交換能力)を持ち、かつ価格の安い金属に着目。酸化コバルトの触媒を通して水分子に電界を与えると、電気分解が起こる事を発見した。また、触媒の近くに小型の磁石を置くと 、反応速度が約3倍に増加することも分かった。水素の大量生成が可能になると、水素をシリンダーで提供し、石油、ディーゼル、圧縮天然ガスに代わる環境にやさしい燃料として使えるようになる。
チームは、「磁界を一度与えるだけで、高速での水素生成を45分以上も継続できる」と、今回の発見が水素の大量生成に貢献すると期待する。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部