2021年08月
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MITと3Dプリンターでオルガノイド培養装置を開発 インド工科大

米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)とインド工科大学マドラス校(IITM)の研究者が、自己組織化する小さな脳組織(「オルガノイド」)の成長と発達を観察できる、3Dプリンターで作製可能な低コストの装置を開発した。米国物理学協会出版部(AIP Publishing)が4月6日に発表し、科学誌Biomicrofluidicsに掲載された。

これまでオルガノイドの成長をリアルタイムで観察するには、複数の穴(well)の付いたガラス底の培養皿が用いられてきた。この方法はコストがかかり、特定の種類の顕微鏡でしか観察できず、栄養培地を補充することができない等の問題があった。

近年、マイクロ流体力学を用い、小さな基盤に繋いだ細い管を通じて栄養培地(nutrient medium)を流し込む技術が開発されたが、こうしたマイクロ流体デバイスは、高価で製造が難しい。

今回開発された、3Dプリンターを用いた基盤は、再利用可能で簡単に調整できる。さらに、ユニット当たりの作製費用はわずか5ドル(約550円)だという。歯科材料としても用いられる生体適合性樹脂を使用し、オルガノイドの成長を観察できる穴と、培地を入れるためのマイクロ流体チャネル、組織の成長を促すための予熱装置を備えている。

この装置を用いた実験では、ヒト細胞を材料とする脳組織のオルガノイドの成長と発達を7日間にわたり顕微鏡で観察することに成功した。小さな脳組織片に、新皮質に似た自己組織化する構造で囲まれた空洞(脳室)ができる様子が観察されたという。さらに、観察期間中に死んだオルガノイド中心部の細胞の割合も、通常の条件下で培養した場合に比べて低かった。 研究者らは、穴の数を増やしてより多くの組織を観察できるようにする等、さらに装置を改良することを計画している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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