インド理科大学院(IISc)の研究者チームが6月29日、既存の薬剤の新規用途をウェブベースで特定できるツールを開発したと発表した。「既存薬剤の新規用途(New use of Old Drugs:NOD)」と呼ばれるツールを使用し、新規治療薬の発見にかかる時間と費用を縮小できるとしている。
従来のツールは、薬剤が結合する標的タンパク質の構造を信頼できる精度で提供できなかった。NODは、標的タンパク質の構造でなくタンパク質配列に組み込まれた情報を解読することにより、標的タンパク質と相互作用する薬剤を特定する。
この研究では、NODを使って結核菌、熱帯熱マラリア原虫、カンジダアルビカンス、ヒト免疫不全ウイルス、C型肝炎ウイルス、新型コロナウイルスなどの病原体に存在する標的タンパク質に結合する薬剤分子を検索し、その効率性を検証した。また、人体で重要な標的であるGタンパク質共役型受容体とキナーゼでもテストした。その結果、病原体のうち65%で、NODはDrugBankを上回る効率性を示した。
DrugBankは、再利用薬剤発見ツールとして現在広く使用されている。またNODにより、いくつかの薬剤についてこれまで知られていなかった再利用の可能性があることが分かった。例えば、骨関節炎に使用されるジアセイレンは結核治療に、抗がん剤のアファチニブはカンジダ症に、抗アレルギー薬のトラニラストはマラリアの治療薬として使える可能性がある。
IIScの研究者は、このツールについて「コロナウイルスを含む稀有な遺伝子疾患や、これまで軽視されてきた遺伝子疾患の治療薬の発見に役立つだろう」と期待を寄せた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部