2021年08月
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外部刺激を必要とせず自律的に自己修復する結晶を発明 インドの研究者

インド科学教育大学(IISER)の研究者らは7月21日、破壊されても1秒に満たない短時間で完全に自己修復する有機結晶を開発したと発表した。今回発明された自己修復性の結晶は、トランスデューサー、センサー、環境発電システム、さらには移植可能な生体医療デバイスなどの有機電子デバイスの開発への応用が期待されている。論文は学術誌 Science に掲載された。

IISERの研究者らは、インド工科大学の研究者と共同で、テトラメチルビピラゾールの結晶を合成した。研究グループは、この結晶を破壊し、その破壊された境界面がどのように修復するか試験を行い評価した。まず、結晶を曲げて破断を生じさせる試験を行い、結晶に線状のクラックを生じさせた。与えていた力を緩和すると、割れた2つの破片は自走して、瞬く間に再結合した。同じ結晶で、亀裂の発生と自己修復を何度も繰り返すことができた。

今回発明された有機結晶の自己修復は、割れた2つの破片の端部の電荷が逆になることで生じる強い引力に駆動される現象である。この現象は、熱や光、溶媒などの外部刺激を必要とせず、自律的に生じる。さらに、既存の自己修復材料とは異なり、この結晶では、物理的に離れていても、ある閾値の距離内であれば破壊された破片は再び結合する。また、この結晶は完全に自己修復しており、高度なイメージング技術を用いて調べても、クラックの兆候は見られなかった。

研究代表者のスロジット・ブニア (Surojit Bhunia) 氏は今回の研究で得られた知見について、「骨や筋肉、コラーゲンなどの自己修復プロセスの解明に役立つだろう」と話している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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