2021年09月
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イソフラボンが豊富な食事、多発性硬化症の緩和に寄与 印・米の共同研究チーム

大豆などに含まれるイソフラボンが豊富な食事は、それを代謝する特定の腸内細菌を増加させ、多発性硬化症 (MS) の重症度を軽減する可能性があることをインドとアメリカの共同研究チームが明らかにした。科学誌 nature India オンライン版が8月6日に発表。論文は科学誌 SCIENCE ADVANCES に掲載された。

MSは、中枢神経系の慢性神経炎症性疾患であり、感覚障害、運動障害、認知機能障害を引き起こすものとして知られている。その原因は遺伝的要因と環境要因があると考えられているが、環境要因についてはまだ十分に検討されていない。近年になって、MS患者では腸内細菌の多様性が低下していることから、腸内細菌叢がMSの発症とその制御に重要な役割を果たす環境因子であると注目されている。本研究では、マウスを用いた実験からイソフラボンが豊富な食事がMSの抑制につながる可能性があることを示した。

インドのゴアにあるビルラ科学技術研究所の研究者と米国のアイオワ大学、ミシガン大学の研究者による共同研究チームは、イソフラボンを含まない食事、イソフラボンを中程度含む食事、イソフラボンを多く含む食事に分け、それらをメスのマウスに6週間与えた。MSと多くの病態を共有することから、MSのモデルとして研究に用いられる実験的自己免疫性脳脊髄炎 (EAE) をこれらのマウスに誘発させ、その経過を観察した。その結果、食事におけるイソフラボンの量が多いとEAEの症状が軽減されることが分かった。また、この軽減効果は、イソフラボンを代謝する細菌とその代謝産物であるエクオールの存在に依存していた。

研究チームは、この結果について、MSやその他の疾患に対する食事療法や腸内微生物を利用した治療方法の開発に役立つ可能性があると期待している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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