2021年09月
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「速度」が「感度」に勝る場合も インド、コロナ検査方法で研究

検査を受ける人数が十分であれば、迅速抗原検査だけでもPCR検査だけの場合と同等の疫学的アウトカムを達成できることが示唆された。

AsianScientist - 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染を最小限に抑えるためには、検査の感度よりも数の方が重要であり得ることが分かった。この調査結果は、科学誌 PLOS Computational Biology に掲載された。

ワクチン接種は世界中で行われているものの、変異株が出現したためCOVID-19の蔓延を食い止めることは難しくなっている。インドでも感染者が激増したが、この主な原因は感染力の高い変異株、デルタ株によるものである。

デルタ株はほんの一瞬の接触でも感染するという報告がある。COVID-19に感染しても気づいていない無症状感染者を特定する必要があり、検査は依然として最優先事項となっている。インドでは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を検出するために主に2つの検査が行われている。ゴールドスタンダードはPCR 検査であり、もう一つは、結果は速く出るが感度の低い迅速抗原検査である。

従来の考え方では、PCR検査だけを実施していけば最終的には感染が減るとされているが、費用の問題と結果が出るまでに時間がかかることから、PCR検査も万能とはいえない。このため、最適な結果を得るためには、限られた費用を考慮しつつ、必要な検査について正確な使い分けを特定する必要がある。

この問題に対処するために、インドのアショカ大学と、タタ基礎研究所に属するインド国立生命科学研究センター (National Center for Biological Sciences: NCBS) の合同チームは、異なる検査の併用で経済的トレードオフという条件を設定し、COVID-19が集団の間でどのように広がるかをシミュレーションした。

人々が異なる場所の間で移動することを考慮して、チームはパンデミック(世界的な大流行)が終息するまでに発生する総感染数について各シナリオの中で計算した。この分析から、終息までに感染者のピーク数と総感染数の両方を減らすことを目指すとすると、迅速抗原検査だけであっても、検査を受ける人数が十分に確保できさえいれば、RT-PCRだけを実施した場合と同等の疫学的アウトカムになる可能性が示された。

このことは、低中所得国の政府がRT-PCRを採用するよりも、価格も感度も低いが迅速に結果が出る検査の強化に力を入れれば、最適なアウトカムを達成できる可能性があることを示している。

ただし、低中所得国の政府は、症例数を最小限とするためには、異なる検査の使い分けについて研究を続けなければならない。検査費用が低下していることから、最も経済的効果の高いものを考えつつ定期的に検査の使い分けを変えてもよい。

「検査方法は常に改善されている。感度が低くても迅速検査は経済面でトレードオフされます。各検査の相対的費用を考慮しつつ複数の検査を併用した場合の影響をモデル化すると、コロナの道筋に確かな影響を与える政策変更を示すことができます」
論文の共著者であるアショカ大学のゴータム・メノン (Gautam Menon) 教授はこのように展望する。

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