2021年10月
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炎症性疾患を引き起こす受容体の構造解明 COVID-19合併症治療へ一歩 インド・カナダのチーム

カナダのマギル大学のシュテファン ラポルテ(Stéphane Laporte)教授をはじめとする国際研究チームは、がんや関節リウマチ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)など、さまざまな疾患の創薬ターゲットとなりうる細胞受容体を研究し、その作動メカニズムを発見した。今回の研究成果は、9月27日に科学誌 Molecular Cell オンライン版に掲載された。

創薬のイメージ

本研究を主導したインド工科大学カンプール校(IIT Kanpur)のアルン・シュクラ(Arun Shukla)教授によると、有害な病原体に対抗するためには「補体系」の活性化が不可欠であるという。しかし、補体系が過剰かつ持続的に活性化すると炎症を引き起こす。炎症は生命を脅かす状態にまで発展することもあり、COVID-19では重篤な合併症の原因となる。

補体系にはC5aR1とC5aR2という2つの受容体が含まれている。受容体は細胞が体内の生理的プロセスを引き起こすための信号を受け取り、伝達することで、メッセンジャーとして機能しており、薬の効果を発揮する重要なものもある。

研究者らは、CRISPRや低温電子顕微鏡などの最先端技術を用いて、補体系に含まれる受容体C5aR2の内部構造を解明した。COVID-19の治療に役立つ創薬ターゲットを得ることにつながる。

アルン・シュクラ氏は今回の成果について「最先端の技術を用いてこれらの受容体の詳細を解読できることを大変うれしく思う。このような情報が得られれば、細胞内シグナル伝達に関する基礎的な知識が深まり、その結果を新しい創薬につなげることができるだろう」と展望した。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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