2021年10月
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ミバエのモチベーションのなぞを解明 インド

脳細胞のカルシウムスパイクに関係するタンパク質のおかげで、ミバエ(fruit fly)は飛翔中であっても食事中であっても高いモチベーションを保ち続けることができる。

AsianScientist - 励ましの言葉は必要ない。ミバエの場合、モチベーションは内部からあふれ出る。研究者らは、ミバエの秘密はドーパミンを産生するニューロン(神経細胞)に存在し、カルシウムの水門を開くタンパク質にあることをインド誌 eLife で報告した。

モチベーションの維持は頭を使うやっかいな作業である。脳内のドーパミンと呼ばれる化学伝達物質が、本人に対してタスクが終了するまで活気を持ち続けるよう促し続ける。 人間は目標を達成するためによくモチベーションを求める。それは当然のことではあるが、モチベーションのメカニズムはミバエでも(飛翔や摂食などの本能的な行動の場合であっても)機能する。

特に飢えたミバエが次の食物を探しているとき、長時間にわたり飛翔することは珍しいことではない。モチベーションの維持はミバエが食物を探し続けるための重要な推進力であり、科学者らは以前、そのような行動をイノシトール1,4,5三リン酸受容体 (IP3R) と呼ばれる細胞内タンパク質と関係すると考えていた。

それでも、これらのタンパク質が関与する神経の構造は憶測にすぎなかった。モチベーションにおけるIP3Rの役割を解読するために、インド国立生命科学研究センターの研究者らは、ニューロンに陰性または機能不全のバージョンIP3Rを誘発させた。その結果、そのようなミバエでは飛翔時間と食物探索行動が著しく低下したことを発見した。

IP3Rはイオンチャネルであり、小胞体と呼ばれる細胞下構造から脳細胞の液体で満たされた主要な細胞間質にカルシウムイオンが流れ込むための通路である。カルシウム濃度が急上昇すると、ニューロンが活性化されてドーパミンを生成し、これらの通信信号を送信することによって相互接続されたニューロンを刺激する。

しかし、脆弱なIP3R変異体を持つミバエの場合、ニューロン内のカルシウム濃度が低下し、そしてドーパミン放出は減少した。これらのミバエの飛翔は信じられないほど短くなった。完全に機能するIP3Rを持つミバエの合計飛翔時間のわずか3分の1である。

驚くべきことに、これらの飛翔時間にかかわるのはわずか4つのドーパミン産生ニューロンであり、また、採餌の調節にも関わることが判明した。これら4つのニューロンで陰性のIP3R変異体を発現させたミバエについて、研究者らは、飢餓や好きな食物でさえ、ミバエの摂食への興味を刺激することはできないことを発見した。

チームによると、調査結果は、長時間のエネルギーを消費する飛翔であっても食物を求め続けるためには、空腹のミバエを動かし続けるモチベーションの神経メカニズムの重要性をはっきりと示すものであった。

「飛翔行動を導く神経回路は配線されていますが、細胞のカルシウム、特にIP3Rによって作用するカルシウムによって微調整する必要があることが示されました。このような調整により、ミバエの内部代謝状態と外部からの信号への応答とのバランスを取ることができます」と責任著者であるガイチ・ハサン (Gaiti Hasan) 教授は説明する。

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