2021年10月
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高温で安定作動するリチウムイオン電池の固体電解質開発 インド

エネルギーの生成と貯蔵は今まさに必要なものであり、費用効果が高く効率的なオプションを開発するための研究が世界でなされている。現在の最先端技術は、従来の低エネルギー密度、低貯蔵寿命の電池を、リチウムイオン電池とナトリウムイオン電池に置き換える可能性を示している。しかしながら、現在の技術には、液体電解質の依存性や作動温度範囲の狭さなど、いくつかの科学的、技術的な制限がある。

インド科学技術省は2021年10月8日、エネルギー貯蔵用のリチウムイオン電池用の熱的に安定した固体電解質を開発し、それは、30〜500℃の幅広い温度範囲での応用が可能となると発表した。

インドのビルラ技術科学大学ピラニ校(Birla Institute of Technology and Science, Pilani)物理学部のアシュマン・ダルヴィ博士(Dr. Anshuman Dalvi)が率いる研究者らは、リチウムイオン電池およびスーパーキャパシター用の熱的に安定した固体電解質の形態での固体エネルギー貯蔵装置を開発し、最先端の設備でそれらの安定性と効率をテストした。

インド科学技術庁(DST)が創設した「FISTプログラム」(※1)の支援を受けたXRD(X線回析)施設は、高温、高解像度で複合材料の調査研究をサポートし、進行中の研究を新しい次元に引き上げた。この研究は、学術誌 Materials Research Bulletin 2021 に掲載された。

同チームは、FISTプログラムが支援する高温X線回折(HTXRD)機能である"Rigaku Smart Lab"(https://www.rigaku.com/products/xrd/smartlab(外部リンク))を使用した。それは、新しい固体電解質の熱安定性評価に特に有用であり、500℃までのXRDパターンがその場で得られた。さらに現在、高温で動作するバッテリーとスーパーキャパシターが開発中であるという。

イオン液体(IL)分散ゾルゲル由来のNASICON(※2)構造化 LiTi 2(PO4) 3(LTP)複合材料の30〜500℃範囲でのHTXRDパターン(※3)の結果は、ILが高温でもLTPとは反応せず、不要な化合物を形成しないことを示した。この複合材料はリチウムボタン電池で使用され、バッテリー条件下で優れた安定性が達成されている。また、広範囲の温度でのバッテリーアへのプリケーションが可能となる。

そのうえで、そのサンプルは電気二重層(EDLC)スーパーキャパシターの電解質として使用されており、約200F/gの大容量と、少なくとも100℃までの熱安定性が10000サイクルで達成された。また、このEDLCは、LEDに電力供給することに成功しており、さらに、200℃で動作するEDLCの研究も進んでいる。

  • (※1)FISTプログラム:Fund for Improvement of S&T Infrastructure in Universities and Higher Educational Institutions (FIST) Program
  • (※2)高温X線解析(HTXRD)パターン:温度の関数としての材料の構造変化を研究するために使用される手法
  • (※3)NASICON:超イオン・ナトリウム伝導体

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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