インドのジテンドラ・シン( Jitendra Singh)科学技術相は、政府は子供たちや若い世代の科学的な気質を促進するために、全国に科学博物館を設立する予定で、科学産業研究評議会(Council of Scientific & Industrial Research:CSIR)と国立科学博物館評議会(NCSM: National Council of Science Museums:NCSM)は、CSIRの一部の研究所に科学博物館を設立し、インド国民の科学的気質を促進するための了解覚書(MoU)に署名したことを発表した。9月29日付。
ジテンドラ・シン科学技術相の発表の模様
ジテンドラ・シン科学技術相は、このMoUについて、CSIRの特定の研究所に科学博物館を設置し、社会のあらゆる層の人々の科学的好奇心と意識を高めることを目的としていると述べ、21世紀の課題に立ち向かうために、科学的思考を身につけることの必要性を呼びかけた。同相はまた、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックを受けて、科学や科学的思考に対する社会の意識を高めることの重要性も強調した。
インドのモディ首相がニューヨークで開催された第76回国連総会で世界が直面している退嬰的思考と過激主義の脅威について指摘したことに触れ、ジテンドラ・シン科学技術相は、科学に基づいた合理的で進歩的な思考が開発の基盤となるべきであり、科学に基づくアプローチを強化するために、インドは経験に基づく学習を推進していると述べた。
同相は、今回のMoU締結について、この方向への第一歩であり、科学コミュニケーションと普及の歴史に新たな章を刻むことになり、インド独立75周年を記念して「アザディ・カ・アムリット・マーツァブ」(※1)が開催されているこの時期に、このような協定が締結されたことを誇りに思うと語った。
今回の計画は、2020年のCSIR総会でのモディ首相の要望に沿って、CSIRがインド工科大学ボンベイ校(IIT-Bombay)と提携し、学校生徒を対象とした「バーチャルラボ」を設立するという新しく価値のある取り組みである。また、CSIRとNCSMが、国立物理学研究所(National Physical Laboratory:NPL)の敷地内に科学博物館を設立し、過去80年間にCSIRが開発した技術やサービスを展示するという象徴的なものでもある。
CSIRはKendriya Vidyalayas(※2)やNavodaya Vidyalayas(※3)、Niti Aayong(※4)のAtal Tinkering Labs Schools(※5)とも連携し、さらには、遠隔地や地方学校にも手を差し伸べる予定。また、CSIRのバーチャルラボやNCSMの移動式科学博物館など、デジタル手段を活用して、補完的で価値の高いものとなる見込みである。
モディ首相は、「21世紀の5C」と呼ばれる「21世紀のスキル」を、学生が身につける必要があるとしているが、この科学博物館建設事業は、その一端を担っている。ちなみに、「21世紀の5C」とは、批判的思考(Critical Thinking)、創造性(Creativity)、協調性(Collaboration)、好奇心(Curiosity)、およびコミュニケーション(Communication)を意味している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部