2021年11月
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体内時計タンパク質とがんの関連性を発見 新治療法確立に光 インド

インドのハリヤナ州にある国立脳研究センターの研究者らは、がん細胞が細胞の概日リズムの分子構成要素を変更して、新しい制御ネットワークを構築することを発表した。科学誌nature indiaが9月30日に伝えた。研究論文は科学誌 Molecular and Cellular Biology に掲載された。

がん細胞は、体内時計により増殖が制御されている正常な細胞とは異なり、体内時計の制御から逃れ、無秩序な増殖を続けることが知られている。国立脳研究センターのエローラ・セン (Ellora Sen) 博士が率いる研究チームは、がん細胞が細胞の概日リズムに関わる分子構成要素を変更して乳酸-炎症-クロック (LIC) ネットワークを構築することを発見した。このネットワークにより乳酸とIL−βが多く産生される。乳酸には腫瘍の成長を促進する効果があり、IL−βはがんの発生と進行に関係する免疫タンパクであることが知られている。

中枢神経系に発生する腫瘍の一種であるグリオーマ細胞を使った、乳酸とIL-1βの活性度を制御する実験では、これらが活性化すると、ClockとBmal1という重要な体内時計タンパク質の発現が誘導されることも分かった。このような相互作用は胃がんや子宮頸がん細胞にも見られることや、コンピューター解析により、胃がん、子宮頸がん、脳腫瘍の患者では、Clock、Bmal1、乳酸脱水素酵素 (LDHA)、IL-1βタンパク質の発現レベルが低いほど、より長く生存できることも明らかとなった。研究者らはこれらの発見が、がんに対する新たな治療法の枠組みとなる可能性があると期待している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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