2021年11月
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2次元材料の欠陥が水の流れを調節すると予測 インド理科大学院

数層の原子からなる2次元(2D)材料は、現在、海水淡水化、油水分離、浸透力発電など、さまざまな用途に向けて研究がなされている。これらの材料には、しばしば不完全な構造や欠陥が含まれており、それらが材料の特性を変化させることがある。通常、材料の欠陥は摩擦力を増大させると考えられているが、コンピューターシミュレーションでは、まったく異なる結果が示された。

この予想外の結果について、インド理科大学院(Indian Institute of Science: IISc)化学工学科のA.G.ラジャン(A.G. Rajan)助教授と国立科学教育研究大学(National Institute of Science Education and Research: NISER)(*1)の学部生A.シール(A. Seal)氏が、10月4日付で学術誌 Nano Letters に論文掲載をした。IIScがウエブサイトで発表した。

この研究チームは、2次元物質である六方晶窒化ホウ素(hexagonal boron nitride: hBN)の電荷分布に関する量子力学的計算と、hBNと相互作用する水の古典的な分子動力学シミュレーションを組み合わせた。分子動力学シミュレーションでは、原子や分子の軌道をモデル化し、ナノスケールの摩擦挙動を予測することができる。

彼らは、窒素(N)空孔(hBN格子から窒素原子が抜けている状態)やStone-Wales欠陥(hBN格子でホウ素-窒素結合が90度回転している状態)などの特定の欠陥が、水とhBNの摩擦を減少させることを発見した。逆に、ホウ素(B)空孔は水-hBN間の摩擦を約3倍に増加させた。そして、これらの予測を、水分子がhBN表面をどの程度「滑る」かを決める量である「滑り長さ」で定量化した。

その結果、欠陥濃度が高い場合、N空孔を持つhBNのスリップ長は、これまでに知られている最も滑りやすい2次元材料であるグラフェン(graphene)に匹敵する可能性があることが判明した。これらの発見は、hBNを用いたデバイスの最適かつ予測的な設計に影響を与えるものである。

(*1) NISER : インド原子力エネルギー庁(Department of Atomic Energy: DAE)傘下の独立研究教育機関

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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