2021年11月
トップ  > インド科学技術ニュース> 2021年11月

"DBTがオンライン国際会議を開催-ナノメディシン:人間の健康のための生体分子(NBHH-2021)、小分子、大きなチャンス!! "

インド科学技術省傘下のバイオテクノロジー庁(DBT)は、20201年10月5日、デリー大学のキロリマルカレッジ(Kirori Mal College)で、"ナノメディシン:人間の健康のための生体分子(NBHH-2021)、小分子、大きなチャンス!!"(Nanomedicine: Biomolecules for Human Health (NBHH-2021) Small Molecules, Big Opportunities!!)と題した国際会議をオンラインで開催したことを発表した。この会議は、DBTの"スターカレッジスキーム"(Star College Scheme:SCS)(*1)の下で、植物・動物学庁(Department of Botany and Zoology: DBZ)が共同で開催したもの。

(*1)スターカレッジスキーム(SCS):全国の科学教育改善のために大学の学部教育を支援する目的で、2008年にDBTによって開始されたプログラムで、批判的思考を改善し、基礎科学科目の学部レベルでの実践的な実験科学を奨励するもの。また、より多くの学生が科学に関する高等教育を受けることを奨励するもの。

SCSプログラム・コーディネーターで議長(開催者)のヴェルマ(A.K. Verma)教授は、会議の評価、テーマ、目的、そして会議後に開催されるナノメディシンに関するワークショップについて説明し、会議の共同開催者であるレヌー・カトパリア(Renu Kathpalia)博士は、主賓としてデリー大学副学長(Vice Chancellor)ジョシ(P.C. Joshi)教授を招待し、会議の正式な開会式を行った。

開会式では、ジョシ教授が祝辞を述べ、校長のチャウハン(V.S. Chauhan)教授が歓迎の挨拶を述べた。冒頭、ジョシ教授は、国際会議の適切なテーマを構想し、国内外の著名な講演者を招集した組織委員会に対して祝辞を述べ、また、大学がスターカレッジとしての地位を確立し、国家評価認定評議会(National Assessment and Accreditation Council: NAAC)認定でAグレード認定を取得したことにも祝意を表した。同教授は、組織委員会が会議の発表から得られる利用可能なリソースの最大限の活用を認知し、インパクトファクター 1.95のCSIRジャーナル「インド・バイオ化学・物理ジャーナル」(Indian Journal of Biochemistry and Biophysics)に長編の成果文を掲載するとも述べた。彼はまた、マハルシ・カナッド(Maharshi Karnad)(*2)が示した「ナノ(Nano)」或いは「パルマヌ(Parmanu):核(小さな分子或いはビルディングブロック)」のコンセプトを強調した。

(*2)Maharshi Karnadは、古代インドの自然科学者で哲学者。最初期のインドの物理学を代表するインド哲学のヴァイシェーシカ派を創設した。デリー大学には、彼の功績を称える"Maharishi Kanad Post-Doctoral Fellowships"がある。

開会式に続いて行われたプレナリーセッションI(第1全体会議)-放射線ナノメディシン/ナノワクチン(Radiation Nanomedicine/Nanovaccines)では、国際遺伝子工学バイオテクノロジーセンター(International Center for Genetic Engineering and Biotechnology: ICGEB)のアートゥロ・ファラスキー(Arturo Falaschi)(*3)名誉科学者であるチャウハン(V. S. Chauhan)教授は、「ワクチン・プラットフォーム:ナノテクノロジーの成果と役割(Vaccine Platforms: Delivery and Role of Nanotechnology)」と題した講演を行った。彼は、様々なタイプのワクチンとその成分について議論し、ワクチンを送達するための手段としてのナノ構造体の形成の役割を強調、また、核酸ベースのワクチン(DNAおよびRNA)、脂質ナノ粒子(LNP)送達システムやマラリア用ペプチドベースのワクチンについても説明した。

(*3)アートゥロ・ファラスキー(Arturo Falaschi):ICGEBの設立と発展の原動力として活躍したICGEBの科学者で、1987年~2010年は分子生物学研究所のグループリーダー、2004年~2010年はセンター長官を勤めた。

スニル・クリシュナン(Sunil Krishnan)教授は、「ナノメディシンとしての放射線治療と放射線診断」と題して、金アマルガムナノ粒子と放射線治療が、膵臓や肝胆膵臓の腫瘍を効果的に治療する役割を果たしていることを詳細に説明、さらに、これらの発見をモンテカルロ計算モデルとシミュレーションで裏付けた。

核医学科学研究所(Institute of Nuclear Medicine and Allied Sciences: INMAS)総局長のA.K.ミシュラ(A.K. Mishra)博士は、「放射性核種はナノとその先」(Radionuclides are Nano and Beyond)について講演し、2日目は、著名な講演者である中国・深圳大学のティミシュ・オルチャンスキー(Tymish Y. Ochulchanskyy)教授が「イメージガイドによる光誘発療法、或いは、癌のためのナノテクノロジーとバイオフォトニクスの融合」(Merging Nanotechnology and Biophotonics for Imaging Guided Photo induced Therapy or Cancer)について講演し、会議は盛況のうちに幕を開けた。

インド国内外の大学から集まった教授陣と招待審査員が、国際的な基準に基づいて研究者の発表を審査した。また、プレゼンテーションの審査は、各分野の専門知識を持つ著名な審査員によって行われた。 ポスターの審査は、英国セントラルランカシャー大学(UCLan)のタパス・セン(Tapas Sen)教授、キロリマルカレッジのリーナ・サクセナ(Reena Saxena)教授、アミティー大学(Amity University)のティンク・バス(Tinku Basu)教授によって厳選に行われた。

口頭発表については、インド医学研究評議会(Indian Council of Medical Research: ICMR)のラジニ・ラニ(Rajni Rani)博士、アミティー大学のプラティマ・チョウダリー(Pratima Chaudhary)博士、インド工科大学ロパール港(IIT Ropar)のドゥルバ・パル(Durba Pal)博士、CSIR傘下の国立科学コミュニケーション情報資源研究所(CSIR-National Institute of Science Communication and Information Resources: CSIR-NIScPR)のプラサナ(Prasanna)博士、ジャミア・ハムダード(Jamia Hamdard)大学のズィーナト・イクバル(Zeenat Iqbal)博士が審査した。

プログラムの最後には、デリー大学南キャンパス長のスマン・クンドゥ(Suman Kundu)教授臨席の下、口頭発表とポスター発表の結果が発表され、教授陣、研究者、学部生に対して合計12の賞が授与された。翌日のワークショップでは、発表者のショートビデオを見ながら、作業の原理や方法論を学んだ。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る