インド科学技術庁(DST)は、現在の表面処理技術と比較してボイラー部品の寿命を2〜3倍向上させ火力発電用ボイラー部品の保護を改善する独自のレーザーベースのクラッドコーティング技術(LCCT)が開発されたと発表した。10月7日付。
DST傘下の「国際粉末冶金・新材料先端研究センター」(International Advanced Research Centre for Powder Metallurgy and New Materials: ARCI)のS.M.シャリフ(S.M. Shariff)博士が率いる研究チームは、ボイラー部品を適切に保護し、2年を超える寿命を延ばす独自のLCCTを開発し、インド特許も取得した(詳細、インド特許番号201811039663を参照)。
この技術は、火力発電所のボイラー部品だけでなく、高温の侵食性および腐食性環境を含むあらゆるエンジニアリングアプリケーションにも適しているLCCTは、基板上にコーティング材料を融合する。ための技術で、これにより、材料を正確かつ選択的に、下にある基板への最小限の入熱で堆積させることができ、耐摩耗性の向上など、部品の表面の特性が向上し、損傷または摩耗した表面の修復も可能になる。
高度な超臨界および超超臨界火力発電所では、ボイラーのさまざまな部分と、フィーダーノズルチップ、再熱器ボイラーチューブの曲がり、バーナースプレッダーなどの付属品が、高温での激しい摩耗と腐食のために劣化し、故障修理およびメンテナンスで頻繁な交換が必要になる。このような問題に起因するシャットダウンは、電力需要がますます高まる中で、発電に深刻な影響を及ぼすことになる。プラントの稼働期間中にこのようなコンポーネントが故障すると、高温と粉塵に包まれた状態や発電量の大幅な損失にもつながるため、故障メンテナンス作業は非常に困難となる。
LCCTは、プロセス監視・制御機能を備えた多軸ロボットに統合された高出力レーザーを使い、ニッケルベースのソフトマトリックスと鋼部品上の硬質金属炭化物粒子(タングステン、クロム、またはバナジウム)を綿密に融合させて開発された。レーザー熱を操作してコーティングの微細構造を制御し、希釈を制御して均一に分布したソフトマトリックス内のハードカーバイド粒子を正確に溶融することで、火力発電所のボイラー部品や、高温を伴う侵食性および腐食性の環境でのエンジニアリングアプリケーションに適した独自のLCCTが可能になったもの。
特許取得済みのLCCTは、インド国家火力発電公社(National Thermal Power Corporation: NTPC)の発電所にある200MWと500MWの発電用ボイラーのフィーダーノズルチップでのテストに成功している。現場の結果は、LCCTでの寿命の延長により、現在使用されている他の表面処理技術と比較して、ボイラー部品の寿命が2~3倍伸びたことを示している。
ARCIでは、このLCCT技術のコスト低減を図り、インドの石炭火力発電所や発展途上国の火力発電所でも利用できるようにするために、多くの起業家が技術開発・改良に参入することを期待している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部