インドのケララ中央大学とハリヤーナ中央大学の研究者らは、インドの様々な羊のミトコンドリアDNA(mtDNA)を分析し、約8000年前からインダスバレーで飼育されてきた羊の起源を明らかにした。科学誌 nature india が10月28日に伝えた。研究論文はバイオテクノロジーサイト National Library of Medcine に掲載された。
細胞のミトコンドリア内にみられるDNAは、母親から子孫に受け継がれる。そのDNAの配列は、時間とともにゆっくりと変化し分子時計として機能する。それは様々な動物の祖先やそれらの家畜化の歴史を追跡するのに役立つ。
ミトコンドリアDNA(mtDNA)に基づいて、羊はA・B・Cの3つの系統に分けられる。ニヤンディ・ナガラジャン(Muniyandi Nagarajan)氏とサティシュ・クマール(Satish Kumar)氏率いる研究者らは、羊の糞便サンプルからmtDNAを抽出し、mtDNAの明確な非コード配列とシトクロムb遺伝子配列を特定した。これらのDNAデータに基づく統計モデルによって、系統Aの羊がインドで家畜化されたことを明らかにした。系統BのmtDNAが、現在インドの西海岸に生存する2品種の主要な羊に多く見られることもわかった。これは西海岸にいる現代の羊の祖先が航路を経由してインドに到着した可能性を示唆する。
これらの遺伝的証拠は、約8000年前のインダス文明における羊の家畜化を示す考古学的発見を裏付けている。家畜は農業と複雑に関係しているので、この研究は農業の歴史をより一層理解することにも役立つであろうと研究者らは話している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部