脳内にある抗酸化物質グルタチオンとpH値の負の相関が、アルツハイマー病の初期症状であることを、インド国立脳研究センターの神経科学者らが発見した。科学誌 nature india が10月27日に伝えた。研究論文は科学誌 IOS Press Content Library に掲載された。
抗酸化物質グルタチオンは、脳内や体内のほかの場所で酸化ストレスを発生させる活性酸素種を中和する。年齢とともに増加する酸化ストレスは、グルタチオンを消費させる。研究者達は、脳内のグルタチオン濃度が下がると、軽度認知障害とアルツハイマー病患者の脳内のpH値が上昇することを発見した。対照群の健康な高齢者の脳は、この負の相関を示さなかった。この相関関係は、アルツハイマー病の早期発見法をもたらすと研究者達は言う。
プラバット・クマール・マンダル(Pravat Kumar Mandel)氏が率いる研究チームは、軽度認知障害とアルツハイマー病の人々の脳スキャンを分析し、健康な人々の脳スキャンと比較した。そこで脳内の酸化ストレスが、記憶の座である海馬内のグルタチオンを激減させることがわかった。左海馬内のグルタチオン濃度は、より過敏であった。酸化ストレスに反応すると、アルツハイマー病患者達の左海馬の平均pH値は、アルカリ性に向かって大幅に増加した。酸化ストレスはまた、彼らの右海馬のpH値も少し上昇させた。
「両方の海馬における結果を組み合わせることで、患者と健康な高齢者を効果的に区別することができた」とマンダル氏は説明し、加えて、脳の前部表層部、前頭皮質においても、同様な負の相関を発見したという。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部