2021年12月
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血中の循環がん細胞を5分以内に検出 インド、磁性ナノロボット開発

インドのマハラシュトラ医学教育研究所の研究者らは11月18日、がん患者の血液サンプルに含まれる循環がん細胞を捕捉できる、磁性ナノロボットを開発したことを発表した。科学誌 nature india が11月30日に伝え、研究成果は学術誌 nature Communications Chemistry に掲載された。

シャシュワット・バナジー(Shashwat Banerjee)教授率いる研究チームは、酸化鉄の半球状のシェルをマグネシウムのナノ粒子に取り付けた磁性ナノロボットを作製した。さらにこのロボットは、がん細胞を標的とする抗体やタンパク質、発光色素などの成分で修飾されており、がん細胞を補足することが可能となっている。

ナノロボットは自己のマグネシウムと血液中に含まれる水分との反応により水素の泡を発生させ推進力を得るため、有毒な化学物質を使用する必要がない。さらにがん細胞を捕捉した際には、外部磁場を用いてナノロボットを遠隔操作で誘導し分離することもできる。

今回の研究では、このナノロボットを用いて、模擬的な生体液や血清サンプル中の大腸がんと乳がんの細胞を5分以内に捕獲することができた。また、実際に上皮性のがん患者から採取した血液サンプルを用いた実験では、1ミリ リットル中に5個という少ないがん細胞数にもかかわらず、ナノロボットが、がん細胞を捕捉することに成功した。 「このナノロボットを臨床現場で用いることで、様々ながんを低コストで検出できる可能性がある」とバナジー教授は期待している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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