インド工科大学ボンベイ校(IIT-B)のカメンドラ・ピー・シャルマ(Kamendra P Sharma)教授率いる研究チームは、人間の活動や産業活動から排出される二酸化炭素(CO2)を捕捉・貯蔵し、工業的に価値のある化学物質である炭酸カルシウムに変換する多孔質液体を設計した。科学誌 nature india が11月23日に伝えた。研究成果は Chemistry A European Journal に報告された。
研究チームによると、この液体は蜂蜜のような粘性をもち、製造が簡単で、連続フローの工業プロセスへの導入も容易であるという。
今回の研究では、多孔質液体とバイオコンジュゲート炭酸脱水酵素 (bio-conjugated carbonic anhydras, bCA)と呼ばれる酵素を組み合わせ、塩化カルシウムを加えて液体の混合物を作った。CO2が多孔質液体の上を通過すると、シリカナノロッドの中空構造によって捕捉され、室温でゆっくりとbCAと結合して重炭酸イオンを形成する。このイオンが塩化カルシウムのカルシウムイオンと反応してマイクロメートルサイズの炭酸カルシウム結晶を形成する。溶液を加熱すると、炭酸カルシウム結晶を分離することができる。
炭酸カルシウムは、建材、セラミックタイル、チョーク、健康補助食品などに使用されている。研究者らは「私たちのプロセスの新規性は、多孔質性と、液体中の触媒活性を組み合わせて、CO2を炭酸カルシウムに変換し、多孔質性液体から除去して再利用することにある」としている。
しかし、この多孔質液を工業規模で使用するには、まだ課題がある。研究者らは「酵素が最もコストの高い成分であるため、多孔質液のコストが高すぎて、商業的に成り立たない」とも話し、より安価な製造方法か、安価な代替品を見つける方法を模索している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部