インドJSPS同窓会(India JSPS Alumni Association: IJAA、会長:サクティ・クマール(Sakthi Kumar)東洋大学教授)は2021年12月6、7日の両日、オンラインで日印科学技術セミナーを開催した。インド科学技術省(MoST)が発表した。
同セミナーは、「日印国交樹立70周年(2022年)」と「インド独立75周年(2021年)」を記念したもので、インド政府科学技術省傘下の独立研究機関であるSree Chitra Tirunal Institute for Medical Sciences & Technology(SCTIMST: ケララ州)と共催した。日本学術振興会(JSPS)がスポンサーとなり、在日インド大使館、在インド日本大使館、インド科学技術庁(DST)と科学技術振興機構(JST)が協力した。
冒頭、インド政府首席科学顧問のヴィジェイ・ラグハヴァン教授(Prof. Vijay Raghavan)は、基調講演で「データの取り扱い、機械学習、人工知能(AI)に焦点を当て、科学技術には、今後発生するグローバルな課題に対応するための非常に重要な役割がある」と指摘。「日印科学技術セミナーにおいては、日印間の学生交流や個別の協力関係を基礎とし、地球全体および、地域需要に対応するための日印間の大きな使命へと発展させることが必要」と強調した。
セミナーは2018年ノーベル生理学・医学賞受賞者である本庶佑教授を迎え、本庶氏は基調講演で、がん治療の将来的な展望と、それに対する世界中の科学者の役割について語った。
サンジェイ・クマール・ヴァルマ大使(H.E. Sanjay Kumar Verma, Ambassador)駐日インド大使は、「ノーベル賞受賞者との交流は、日印のパートナーシップのさらなる強化に役立つ」といい、「インドと日本は、科学技術を含む外交の様々な側面に深く関わっており、このイベントは両国の外交関係を祝う機会となっている。また、科学者コミュニティとイノベーターが協力し、共同イノベーション、共同プロモーション、共同創造を通じて、我々がそれぞれ直面しているが、共通性を持つ脅威に対する解決策を見出すようにしたい」と促した。
一方、鈴木哲駐インド日本大使は、日印関係について「近年、急速かつ大幅な拡大を遂げている。科学技術は両国政府が最も重要視する分野の一つであり、月への共同ミッションがある宇宙や、バイオテクノロジー、AI、ナノテクノロジー、量子技術などの分野は、両国の研究者が協力し、社会の生活をより良くするために貢献できるエキサイティングな分野である。JSPSは、その幅広い学術的・科学的プログラムを通じて、日本とインドの関係を促進する上で極めて重要な役割を果たしている」と述べた。
DST長官(当時)のラヴィチャンドラン博士(Dr. Ravichandran)(※1)は、最近両国はICT、AI、ビッグデータの分野で3つの日印共同研究所を設立したことを指摘し、「現在の協力関係は、21世紀の知識経済に貢献できる価値ある関係の構築に向けられている。我々は、若い世代がより国際的な環境で研究活動を行うことを奨励している。また、さくらサイエンスプログラム(Sakura Science Program: SSP)(※2)では、これまでに約570名のインドの学生や研究者が日本を訪れている。また、1年にわたる活発な科学技術トークシリーズは、日印の協力関係の活力を取り戻すであろう」と説明した。
科学技術振興機構(JST)・さくらサイエンスプログラム推進本部長の岸輝雄博士は、「インドと日本は過去70年にわたり、平和的で成功した関係を築いてきた。科学技術分野では、両国政府はバイオテクノロジー、情報通信技術の分野で協力を進めており、2007~17年度でJSTとDSTは21のプロジェクト(SICORP)を推進してきた」と強調した。
また、日本学術振興会(JSPS)の里見進理事長は、「JSPSが研究者間のネットワークを構築、維持、強化してきた。2006年に設立されたインドのJSPS同窓会には400人以上の会員がおり、その多くがインドの科学技術界を代表する一流の研究者である」と述べた。
基調講演をはじめ、特別講演、招待講演、インドと日本の著名な科学者による基調講演、学生のポスター発表からなる今回のオンラインセッションは、インド国内10の学校でもライブ配信された。
(※1)2021年12月14日、DSTは公式フェイスブックで、DST長官を兼務していたラヴィチャンドラン氏が同長官を辞任し、後任にスリヴァリ・チャンドラセカール博士(Dr. Srivari Chandrasekhar)が就任したと発表した。
(※2)SSPでは、2015~19年の5年間で、インドからは合計では約2,900名の高校生、教師、大学生、研究者、行政官などが日本に招へいされた。しかし、2020、21年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で招へいは中断しており、オンラインでの交流が続けられている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部