インド理科大学院(IISc)の研究者らは、硫化水素(H2S)ガスがエイズウィルス(HIV)の抑制に重要な役割を果たすことを発見した。IIScが2021年12月7日に発表。研究成果は11月18日に科学誌 eLife Sciences に報告された。
発見したのは、IIScの微生物学・細胞生物学部門(MCB)および感染症研究センター(CIDR)の研究者と、インドのバンガロール医科大学・研究所の共同研究者から構成される研究チームで、発表によると、H2Sの増加は、HIVに感染したヒト免疫細胞内でのウイルスの増殖速度を抑える直接的な効果があることを明らかにした。
現在の最新の抗レトロウイルス薬併用療法(cART)は、HIVの治療薬ではなく、ウイルスを抑制することしかできないため、患者によっては効果が出ないことがある。
有害な分子が蓄積して「酸化ストレス」を引き起こし、細胞の動力源であるミトコンドリアの機能が失われるなど、cARTには有害事象があることが知られている。これまで、HIV感染細胞においてH2Sが酸化ストレスとミトコンドリア機能障害の両方に有益な影響を及ぼすことが示唆されていた。研究チームは、H2SにはHIVの再活性化と複製を抑制する直接的な効果があり、ミトコンドリアの健康維持や酸化ストレスの緩和など、他の有益な効果も有することを示した。
研究者らはこの結果について、「H2Sの供与体でcARTを補って、HIVを深い潜伏状態に留める道を開くものであり、ウイルスに感染している数百万人の生活を改善する可能性を持っており、すでに臨床試験が行われているため応用への道は近い」と期待を表明した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部